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Science Lecture 2018。二度目の開催となる今回は、北海道大学 総合博物館にて、小中高生を対象に実施しました。テーマは「バイオミメティクス」。生き物の巧みな機能づくりに学んで、新たな科学・技術を生み出そうとする学問です。前半は2名の講師によるレクチャー、後半は普段は入ることのできない館内の標本庫の見学や、実験をしました。
(今回のScience Lectureはクリスマスシーズンに実施。館内にも可愛らしいツリーが飾られていました)
はじめに
冒頭に、中垣俊之さん(電子科学研究所 所長)、西井準治理事・副学長、西嶌一泰支社長(読売新聞北海道支社)より挨拶がありました。「人類の財産である科学を若い人たちに届けたいという思いから、サイエンスレクチャーをはじめました」と中垣さん。西井理事・副学長は、「私も、蛾の目の表面をまねてカメラのレンズを作るという研究をしたことがあります」と、バイオミメティクスの一例を紹介。西嶌支社長は、「北海道大学との連携により、こうしたイベントを開催できることを嬉しく思います」と話しました。司会の古澤輝由さん(CoSTEP 特任助教)からは、サイエンスレクチャーのアイディアのもととなったイギリスの歴史的な科学イベント、クリスマスレクチャーの紹介などがありました。
(クリスマスレクチャーについて説明する司会の古澤さん)
「生物すごいぜ!」
一人目の講師は昆虫標本分類学、資料保存学などを専門としている、大原昌宏さん(総合博物館 副館長)。同博物館には、およそ350万点の資料が所蔵されています。大原さんのプロジェクトでは、それらの資料をバイオミメティクスの”気づきのきっかけ”として活用することを目指し、昆虫標本をデータベース化するとりくみを行っています。電子顕微鏡を使って昆虫のあらゆる箇所を画像におさめ、科学に役立つ情報を簡単に引きだせるよう整理しているのです。さらに、生物学者だけでなく、工学、物理、数学、情報科学など、様々な分野の研究者とともに画像検討会を実施しています。「博物館標本は、バイオミメティクスのアイディアの宝庫です」と、電子顕微鏡画像を見せながら話しました。
(「生物好きなひとー?」という問いかけに、たくさん手が挙がります)
(自身のプロジェクトについて紹介する大原さん)
「工学すごいぜ!」
続いて、高分子化学やナノサイエンスを専門としている居城邦治さん(電子科学研究所 副所長)が登壇。バイオミメティクスの実例を用いて解説しました。ハスの葉の超撥水性・自浄作用はロータス効果と呼ばれ、まさに理論よりもバイオミメティクスが先行した例です。実はヨーグルトの蓋にも、裏にヨーグルトがつかないようハスの葉からヒントを得ているものがあります。世界一美しい蝶として有名なモルフォチョウ。その鮮やかな青色は、色素によるものではなく、翅の表面の微細な規則構造によって作りだされています。この構造をまねたナノテク繊維も作られており、化学染料不要で色落ちの心配もありません。「自然はこの世界にどのような設計があるのかを教えてくれます。21世紀は生物の時代と言われており、生物とナノ、生物とITをかけ算していくことが求められています」と語りかけました。
(バイオミメティクスについて解説する居城さん)
次回は、レクチャーの後に行われた標本室見学や実験の様子をお届けします。
(文・写真:総務企画部広報課 研究広報担当 菊池優)
Science Lecture 2018「え?こんなモノがあんな生き物から!?〜生き物にまねる、新たなモノづくり バイオミメティクス〜」
日 時:2018年12月22日(土)13:00-15:00
会 場:北海道大学 総合博物館 1階ホール 知の交流 他
講 師:居城 邦治(北海道大学 電子科学研究所 副所長・教授 / 国際連携研究教育局 教授)
大原 昌宏(北海道大学 総合博物館 副館長・教授 / 大学院農学研究院 教授)
与那嶺 雄介(北海道大学 電子科学研究所 助教)
佐藤 広行(北方生物圏フィールド科学センター 植物園 博士研究員)
司 会:古澤 輝由(北海道大学 CoSTEP 特任助教)
参加者:小中高生・一般 42名
主 催:北海道大学 電子科学研究所、北海道大学 総合博物館、読売新聞北海道支社
協 力:北海道大学 総務企画部 広報課、北海道大学 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
連 携:TERRACE-科学とアートが出会う場所-
後 援:札幌市教育委員会
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