
朝里スキースクール所属/全日本スキー連盟ナショナルデモンストレーター
片岡 嵩弥
KATAOKA Takaya
|工学部卒業|
"できる"が増える喜びを ― 北大発、スキー指導者の挑戦
全日本スキー連盟のナショナルデモンストレーターを3期連続で務める片岡嵩弥さん。スキーやスノーボードの最高レベルの技術を持つ指導者であるナショナルデモンストレーターは、大会での成績などをもとに2年に一度、30人(男性20人、女性10人)が選出される。その狭き門を突破し、技術指導を通じてスキーの発展に貢献する片岡さんに、現在の活動に至るまでの経緯やこれからの目標について伺った。
―どのような幼少期をお過ごしでしたか?
中学までは野球少年でした。両親がスキーの指導員の資格を持っていたこともあり、物心ついた頃にはスキーをしていましたが、あくまで遊びの一つでしたね。冬は地元の朝里川温泉スキー場を遊び場にしていました。
ースキーを本格的に始めたのはいつ頃でしょうか?
高校からです。野球で上を目指すのは難しいと感じ始め、長く続けられて全国大会のチャンスがありそうなスポーツにチャレンジしたくて、スキーなら手が届くかな、と。高校のときに地元のクラブチームに所属して本格的にスキーを始めました。
ー北大へ進学した理由をお聞かせください。
大学は、スキーを続ける前提で選びました。「雪があるところ」を条件にしていたので、長野や新潟も進学先の候補でした。北大は高校生の時に初めて訪れて「こんなところで大学生活を送れたらいいな」と憧れていました。入学後は、技術を磨くため競技スキー部に入り、学部はスキーと両立できることを最優先に選びました。やりたい研究より授業のコマ数を重視しました(笑)。

滑走する片岡さん(提供:片岡嵩弥さん)
ースキーの道へ進もうと決めたのはいつ頃でしょうか?
はじめは、公務員をしながら休日にスキーをする生活をぼんやりと描いていたのですが、大会に出るには毎年3月に一週間程度の休みが必要です。年度末にそんなに休むのは現実的じゃないと気付きましたね(笑)。就職活動が始まる3年生の冬には、スキーで食べていこうと気持ちを固めました。
ー実際にスキーの活動を始めてみて、いかがでしたか?
最初の年は、地元の朝里川温泉スキー場に勤めました。夏はゴルフ場のスタッフ、冬はスキースクールでレッスンをする生活です。スキーを続ける上で、指導者の最高峰であるナショナルデモンストレーターを目指していました。それには、全日本スキー技術選手権大会とデモンストレーター選考会での成績が鍵になります。ところが、コロナ禍で大会が中止になってしまったんです。更に悪いことに膝を痛めて手術をしました。大会はなくなり、怪我で思うように動くこともできず、稼ぎもない。八方塞がりで、スキーで生きていくという気持ちも揺らぎました。

オフシーズンにトレーニングに励む片岡さん
ー厳しい局面をどのように乗り越えたのでしょうか?
周りの人の支えと、地道なリハビリの積み重ねでしょうか。高校生の時にお世話になったコーチがアルバイトを紹介してくれてなんとか食いつなぐことができ、リハビリで少しずつ回復するのが心の支えでした。今振り返ると、あの怪我では、仮に大会に出てもベストな滑りはできなかったでしょうから、大会が中止になり治療に専念できて良かったと思います。渦中にいるときはそうは思えませんでしたが、あとになってわかる事もありますね。2年目の冬は大会が行われ、ナショナルデモンストレーターに選出されました。
ー年間の活動を教えてください。
朝里スキースクール(小樽市)に軸足を置きながら、様々な地域に出向いてレッスンをしています。オフシーズンは、スキー板のメーカーの展示会で全国に足を運びます。ニューモデルの広告塔の役割です。また、年間を通して行っている体づくりに関するイベントでは、怪我の経験も踏まえ、トレーニングするメリットを伝えていきたいと思っています。自分で立ち上げたクラブチームも運営していて、ここ2、3年でスキーに関わる活動でやっていけるようになりました。

オフシーズンのトレーニング風景
ーこれからの目標をお聞かせください。
直近では、世界スキー指導者会議(※)への出席です。この会議に参加できるのはナショナルデモンストレーターのうち10人だけ。僕は2023年に初めて参加したのですが、ほとんど何もできず悔しい思いがあります。日本代表として出席するからには、次は中心的立場で臨みたい。そして、いつかは日本チームのリーダーとして参加したいと思っています。
ー北大生へのメッセージをお願いします。
僕は、「できる」が増えるプロセスが好きです。子どもたちには、どんどんトライして「できない」を「できる」にして欲しいし、大人の方々は、できないと決めつけずにチャレンジして欲しい。できるようになることを面白がる、そんな挑戦をスキーを通じて後押ししたいと思っています。大学生は、体力的に多少の無茶も可能な時期ですよね。研究でも課外活動でも、壁を作らず、気になったらまずはチャレンジして、「できる」が増えていく過程をぜひ楽しんでください。
※世界スキー指導者会議(通称:インタースキー)
スノースポーツのインストラクターが集まって、最新の指導法や技術、マーケティング戦略や環境問題などについて意見交換をする国際会議。4年に1回開催される。

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PROFILE 北海道出身。2019年、北海道大学工学部卒業。2021年、当時としては最年少で全日本スキー連盟ナショナルデモンストレーターに選出され、その後、3期連続でナショナルデモンストレーターを務める。朝里スキースクールに拠点を置きながら様々な地域に出向いてスキー指導を行うほか、トレーニングイベントの開催などスキーに関する活動を広く展開している。 |
(取材・文:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 長谷川亜裕美)
(写真:社会共創部 広報課 長尾美歩)



















