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総長職務代理からのメッセージ

 新入生の皆さん、入学おめでとうございます。ご家族、関係者の皆様にも心からお祝いを申し上げます。

 今年は、新型コロナウイルス感染症の流行により、入学式を挙行することができませんでした。規模を縮小して実施することも検討しましたが、皆さんとご家族、関係者の皆様の安全を第一に考え、中止した次第です。皆さんにとって一生の思い出になったはずの入学式を挙行できなかったことは誠に残念ですが、やむをえなかったことをご理解いただきたいと思います。式はなくとも、北海道大学の一員となる皆さんを暖かく迎えたいという本学教職員の思いに全く変わりはありません。

 また、皆さんと教職員を新型コロナウイルス感染の脅威から守るため、授業の開始日を5月11日として、授業も可能な限りオンラインで行う準備をしています。新年度の始まりを心待ちにされていた皆さんにとっては戸惑うことが多いと思いますが、この点についてもご理解ください。

 さて、本学の前身である札幌農学校は、我が国における最初期の学士授与機関の一つとして、1876年に設立されました。そこでは、米国マサチューセッツ農科大学から招聘された初代教頭ウイリアム・S・クラーク博士の指導のもと、リベラル・アーツ教育を基盤として、農学にとどまらず、化学、数学、生物学から語学、歴史学、経済学まで幅広い分野の教育が英語により実施されました。クラーク博士は、札幌農学校の開校式においてlofty ambition(高邁なる大志)について触れていますが、これは時代の課題に対峙し、敢然として新しい道を切り拓いていく勇気と行動力の重要性を学生に訓示したものです。また、学生が規律違反を起こした際に、クラーク博士は "Be gentleman" (時代に合うように言い換えると、「紳士・淑女たれ」)と言われ、学生の自覚を促したと伝わっています。本学は教育・研究に関する4つの基本理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げておりますが、これらの理念はいずれも札幌農学校の時代から大切に継承されてきたものであることがお分かりになると思います。

 本学は、いまや12の学部と21の大学院、そして3つの専門職大学院を擁する我が国屈指の基幹総合大学へと発展を遂げ、世界水準の教育・研究が行われています。日本全国はもとより、100を超える国々から集った約1万9,000名の学生が在籍し、国際色もきわめて豊かです。札幌市の中心に位置する札幌キャンパスのほか、函館市に水産学部のキャンパスがあり、ほかにも臨海・臨湖実験所、果樹園、植物園、牧場などを有しています。また、全国6カ所に広大な研究林があり、本学の総敷地面積660平方キロメートルは国土面積の約500分の1に及びます。皆さんには緑豊かな広大なキャンパスでのびのびと勉学に励んでいただきたいと思います。

 これから大学で学んでいくにあたって、どういうことに留意すべきでしょうか。私が重要と思うのは、社会的課題であれ、学問的な問題であれ、世の中の多くの課題や問題のほとんどは非常に複雑であり、唯一の絶対的な解はないということです。高校までは、はっきりとした答えのある問題を解ければ、それでよかったわけですが、大学では解がない、複数の不完全な解がある、あるいは解があるのかないのかも分からない課題や問題に対処する能力を身に付けていく必要があります。環境汚染、気候変動、エネルギー資源の枯渇、少子高齢化、貧富の格差拡大等の諸課題はもちろんのこと、喫緊の課題になっている新型コロナウイルス感染症の制御や制圧も極めて複雑な問題であり、国や地域によって対応が異なることからもわかるように、唯一の絶対的な対処方法はありません。

 複雑で困難な課題や問題に対処するためには、専門知識の習得はもちろん重要ですが、それだけでは不十分です。専門領域にとらわれない俯瞰的で複合的、さらには国際的な視点をもって、自らの頭でじっくりと考えること、多様な人々の理解と信頼を得ながらチームを組んで仕事をしていくことが大切だと思います。本学における日々の学びを通じて、そのような能力を修得していただければ幸いです。本学は創基150周年を迎える2026年に向けて、「北海道大学近未来戦略150」を策定していますが、その中で「世界の課題解決に貢献する北海道大学へ」という標語を掲げています。皆さんが、本学で学んだあと、世界の課題解決に貢献する人材として巣立っていかれることを強く願っています。

 結びに、皆さんの学生生活が楽しく、そして実り多いものとなることを祈念して、私からのメッセージといたします。ご入学、誠におめでとうございます。

令和2年4月6日

北海道大学総長職務代理
笠原 正典