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スラブ研究センターがBRIT XII(Border Regions in Transition: 移行期の境界地域)研究大会を東アジアで初開催

 スラブ研究センターでは,11月13日(火)から16日(金)まで,BRIT XII福岡・釜山大会を開催しました。1994年にドイツ・ポーランド大会で結成された,境界・国境地域に関わる研究者が集うネットワークBRITですが,その後,ヨーロッパを中心に大会が組織され,近年は北米・南米へと拡大していました。本学を中心としたチームが,昨年9月にスイス・フランスで開催された第11回大会に参加し,この第12回大会を誘致しました。
 BRITの特徴は,通常の学会組織と違い,恒常的な事務局をもたない自発的な研究ネットワークであることです。そのため大会を誘致・主催する組織者がプログラムやスケジュールを自由に組むことになります。ただし,いくつかのルールがあり,国境に面した2つの異なる国の都市で開催すること,会議の間に国境を越える巡検(フィールドトリップ)を入れることが必須とされています。
 このような巡検をスムーズにできる地域,そして何より隣国とペアの関係でその発展を考えている都市は,日本でただひとつ,福岡市しか見当たりません。そこで3年かけて福岡市と協議するとともに,韓国・釜山にもたびたび足を運び,九州大学と東西大学校(釜山)を共催組織に加えることで,BRIT XIIの実施体制を組みました。
 大会初日,佐伯 浩総長による開会の辞に続き,主催者を代表してスラブ研究センター 岩下明裕教授(GCOE拠点リーダー)が,“BRIT XII:Challenges and Perspectives”と題するスピーチを行い,その中で,ユーラシア・東アジアにおいて境界研究の拠点が不在であると述べ,BRIT初の東アジアでの開催意義が強調されました。
 会場の福岡国際会議場では,福岡市主催による九州大学・東西大学校の学生による討論会や,姜 尚中(カン サンジュン)氏(東京大学)の講演会も開かれました。境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)の組織からは,稚内,与那国,竹富,五島など国境自治体の実務者も参加し,日本の境界研究の存在感を示しました。福岡で2日間研究大会を行った後,参加者一同はJR九州からチャーターしたビートル号(水中翼船)で博多港から対馬厳原港に渡り,「国境の島」対馬を縦断し,財部能成氏(対馬市長)の講演を経て,比田勝港から出港し,韓国釜山港へ入国しました。今回の船による国境越えは多くの境界研究者の関心を引いたようです。
 釜山では,東西大学校の真新しいセンタム・キャンパスで大会が続けられました。最終日,張 濟國(チャン ジェイクック)氏(東西大学校総長)は,昨今の日韓間の対立を念頭に置きつつ,境界間の交流を続け,境界研究を推し進めることが両国間の政治的対立,さらには東南アジアにおける対立の解決につながるとの期待を表明し,4日間にわたる大会が成功裏に閉幕しました。40カ国200名を越える参加者のスケールはBRIT史上最大となり,アジア・ユーラシア地域の研究者,特に日本,シベリア・極東ロシア,中国,シンガポール,タイ,インドの研究者群の存在感は,これまでBRITを牽引してきた欧米の研究者に多大なインパクトを与えました。
 

 

 

佐伯総長による開会の辞
佐伯総長による開会の辞