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動体追跡粒子線がん治療装置で全国発明表彰「恩賜発明賞」を受賞

   北海道大学と株式会社日立製作所(以下,日立製作所)は,この度,動体追跡粒子線がん治療装置(特許第05896211号)に関する発明で,平成29年度全国発明表彰で最も優れた発明に贈られる「恩賜発明賞」を受賞しました。6月12日(月)の表彰式には,本学から名和豊春総長及び受賞者4名と,共同受賞した日立製作所の関係者が参加し,常陸宮殿下のご臨席のもと,公益社団法人発明協会会長より賞状が贈呈されました。
  

賞の概要:

   全国発明表彰は,日本における発明,考案または意匠の創作者並びに発明の実施及び奨励に関し,功績のあった研究者・科学者を顕彰することにより,科学技術の向上及び産業の発展に寄与することを目的として1919年に創設された賞です。
   中でも恩賜発明賞は,皇室からの御下賜金を拝受して行う本発明表彰の象徴的な賞として,最も優秀と認められる発明等の完成者に贈呈されます。
  

受賞内容:

   粒子線がん治療は,放射線によるがん治療法の一つであり,水素の原子核である陽子や炭素イオンなどの粒子を加速器で高速に加速し,生成した粒子線を腫瘍に集中して照射することでがんを治療するものです。治療に伴う痛みがほとんどなく,他の放射線治療に比べて副作用が少ないため,治療と社会生活の両立が可能であり,生活の質(QOL: Quality of Life)を維持しつつ,がんを治療できる最先端の治療法として国内外の医療機関で導入が拡大しています。従来,頭部の腫瘍のように移動しない部位では,腫瘍に集中して粒子線を照射するピンポイントの治療が可能でしたが,肺や肝臓のような体幹部の腫瘍は呼吸などで移動するため,腫瘍位置をリアルタイムで捉えて正確に粒子線を照射する技術が求められていました。
   こうした背景のもと,本学と日立製作所は内閣府/日本学術振興会・最先端研究開発支援プログラムの支援を受け,本学が持つ動体追跡照射技術と,日立製作所が持つスポットスキャニング照射技術の両方を世界で初めて搭載したシステムを共同開発しました。両者の持つ技術を融合した本発明を活用することで,移動する腫瘍に対するより正確な照射と,その照射をより短時間に行い患者への負担を軽減することを両立させることが可能となりました。北海道大学病院では,2014年から本技術を適用した陽子線によるがん治療を行っています。
  

受賞者:

    北海道大学大学院工学研究院      教授        梅垣 菊男(うめがき きくお)
    北海道大学大学院工学研究院      准教授     松浦 妙子(まつうら たえこ)
    北海道大学病院                  助教        宮本 直樹(みやもと なおき)
    北海道大学大学院医学研究院      教授         白土 博樹(しらと ひろき)
    日立製作所                        藤井 祐介(ふじい ゆうすけ)氏
    日立製作所                        梅川  徹(うめかわ とおる)氏
    日立製作所                        梅澤 真澄(うめざわ ますみ)氏
  

表彰式の様子:

   表彰式は,6月12日(月),ホテルオークラ東京別館2階「オーチャードルーム」にて執り行われ,発明協会会長から代表者の藤井祐介氏(日立製作所)へ賞状が授与されました。また,安倍晋三内閣総理大臣,松野博一文部科学大臣,世耕弘成経済産業大臣からの祝辞の代読がありました。
   表彰式終了後には,公益社団法人発明協会関係者,全国発明表彰受賞者及び関係者が出席し,受賞懇親会が盛大に執り行われました。懇親会へは,本学の名和総長や共同受賞した日立製作所の中西会長,受賞者の配偶者等の関係者も出席し,受賞の喜びを分かち合いました。
   また,会場には受賞業績を紹介するパネルと製品見本が展示され,多くの出席者にご覧いただきました。

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                 本学の受賞者                          名和総長と本学の受賞者                      パネルと製品見本
 

名和総長のコメント:

   今年度の全国発明表彰「恩賜発明賞」において,本学から4名の教員が受賞の栄誉に浴したことは,大変喜ばしく,光栄なことであります。高齢化が進む中,QOLを考慮した治療のあり方が世界的にも模索されております。この度の研究成果が,がんに苦しむ方々にとっての福音になることを願うとともに,今後とも不断の努力を重ねて参る所存です。
  

お問い合わせ先
 北海道大学総務企画部広報課広報・渉外担当
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