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低温科学研究所 木村勇気准教授,農学研究院 志村華子助教が日本学術振興会賞を受賞

【概要】
 日本学術振興会賞は,人文,社会科学及び自然科学の全分野において,優れた研究を進めている若手研究者(45歳未満)を早い段階から顕彰してその研究意欲を高め,独創的,先駆的な研究を支援することで,我が国の学術研究の水準を世界のトップレベルに発展させることを目的として,平成16年度に創設された賞です(http://www.jsps.go.jp/jsps-prize/index.html)。
 今年度は全国から25名の受賞が決定し,本学からは以下の2名が受賞することとなりました。
 授賞式は,平成30年2月7日(水)に日本学士院にて開催されます。

 

【受賞者・研究課題】
 ① 低温科学研究所 准教授 木村勇気(きむらゆうき)
   研究課題  ナノ領域の特異性を取り入れた結晶化初期過程の解明とその天文学への応用

 ② 大学院農学研究院 助教 志村華子(しむらはなこ)
   研究課題  植物ウイルスの病徴誘導におけるRNAサイレンシングの関与とサイレンシング制御による抗ウイルス剤の探索

 

【受賞理由】
 木村勇気 准教授
 「ナノ領域の特異性を取り入れた結晶化初期過程の解明とその天文学への応用」

 核生成は原子や分子が集合構造を作る起点の現象であり,物質形成の基本現象であるにも関わらず,その定説には不完全な部分が多く,理論値と実験値には大きな隔たりがあります。また,宇宙に存在する100nm以下の鉱物(宇宙ダスト)は,宇宙物質の創成史において非常に重要な物質ですが,その成因には不明な点が多くあります。木村准教授は,独自のレーザー干渉計や赤外分光法,高分解透過型電子顕微鏡中でのナノ粒子の形成と核生成過程のその場観察などにより,ナノ粒子の物性値の精密な測定に成功し,それらがバルクと時には数桁の違いをみせること,特異な成長過程を示すことを明らかにしました。また,この成果を取り入れることで,これまでの天文学・鉱物学における様々な物質の生成機構の常識を覆し,宇宙ダストの再合成や,晩期型巨星周辺のダストが示す特徴的な赤外スペクトルの説明に成功し,アストロナノミネラロジーと言われる学術分野の開拓に貢献しました。
 以上のとおり,木村准教授は,結晶工学,天文学,惑星科学などの多岐にわたる優れた学術成果を挙げており,今後のさらなる発展が期待されます。
 

 志村華子 助教
 「植物ウイルスの病徴誘導におけるRNAサイレンシングの関与とサイレンシング制御による抗ウイルス剤の探索」

 植物ウイルス病による被害は世界で年間5兆円を超えると見積もられていますが,未だ有効な抗ウイルス剤は存在しません。
 志村助教は,キュウリモザイクウイルスが植物の葉に鮮やかな黄色モザイク状の病徴を引き起こす原因が,ウイルスに寄生する低分子RNAであること,その低分子RNAがRNAサイレンシングと呼ばれる現象によって葉緑素合成に関わる遺伝子のmRNAを分解し,葉緑素合成を抑制することを明らかにしました。これは植物ウイルスの病徴誘導に宿主遺伝子のRNAサイレンシングが関与することを証明した最初の例であり,植物病理学分野に大きなインパクトを与えました。
 本来,植物のRNAサイレンシングは,感染ウイルスの増殖を抑制する防御応答機構の一部ですが,ウイルスはこの防御応答を回避する機構を有します。志村助教は,ウイルスのもつRNAサイレンシング抑制機構を阻害する化合物としてビタミンC誘導体を見出し,その作用機構を明らかにしました。栄養繁殖性植物のウイルスフリー化を目的とした茎頂培養において,今後の実用化が期待されます。

 

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