センター長挨拶

概要緒言


北海道大学脳科学研究教育センター長 田中真樹 医学研究院 教授

Research and Education Center for Brain Science (RECBS)

北海道大学脳科学研究教育センター長
田 中 真 樹
医学研究院 教授


脳は情報を処理するための唯一の器官であり、私たちの生活を支え、こころを創る重要な役割を担っています。そのメカニズムは複雑で、心理学、生命科学、情報科学、臨床医学など多くの分野で研究が進められています。とくに近年、脳科学研究の発展はめざましく、最先端の脳機能イメージング、脳神経ネットワークの網羅的解析、遺伝子導入による神経回路操作、機械学習を用いたデータ解析など様々な手法を用いた研究が活発に行われています。また、精神神経疾患、認知症、発達障害などの病態解析や新たな介入方法の開発など、脳科学の重要性は広く一般に認識されており、大きな関心を集めています。こうした状況の中、多様化する脳科学研究を俯瞰し、その一翼を担う人材を育成することが大学の大きな使命となっています。

北海道大学脳科学研究教育センターは、2003年9月に全国に先駆けて脳科学に特化した部局横断型の学内共同研究教育施設として設置されました。その目的は、@脳科学に関する様々な分野の研究を推進し、A脳科学に関する幅広い知識を持つ人材を育成することです。以来、20年近くにわたり「臨界期」、「コミュニケーション」、「先端計測」の3つの研究領域において、複数部局の教員による分野融合的な脳科学研究が推進されてきました。これらの研究交流には、多くの学部が札幌キャンパスに併設されている本学の利点がよく活かされ、2023年4月現在、本センターには文系・理系の11部局から36名のセンター教員(兼任)が参加しています。

また、本センターでは「脳科学専攻」を設置し、脳科学に特化した文理融合型のバーチャル大学院教育に力を注いでいます。大学院共通授業科目として「脳科学入門(7科目)」、「脳科学研究の展開(7科目)」など体系的な講義・実習を行い、専攻生だけでなく全学の大学院生に脳科学を学ぶ機会を提供しています。さらに、合宿研修や研究発表会、脳科学シンポジウムの開催、複数部局の教員の論文審査による修了認定など、センター教員と履修生が一体となったユニークな研究教育活動を展開しており、これまでに131名の修士課程修了生と26名の博士(後期)課程修了生を送り出してきました。また、本学の脳科学を継続的に発展させるため、2018年度より学部生向けの一般教育演習科目「北大脳科学への招待」を複数部局の基幹教員が協力して開講し、毎年好評を得ています。
これらの活動を通じて、北海道大学における脳科学研究がさらに発展し、広い視野をもった次世代の研究者が本学から輩出されることを願っています。