センター長挨拶

概要緒言


北海道大学脳科学研究教育センター長 渡邉雅彦 医学研究科 教授

Research and Education Center for Brain Science (RECBS)

北海道大学脳科学研究教育センター長
渡 邉 雅 彦
医学研究科 教授


脳は、無限の可能性と多様性を作り出す不思議に満ちあふれた臓器です。感覚の鋭敏さや運動の俊敏さでは他の動物種に劣るホモ・サピエンスが、この地球上に高度な文明を築いたのも脳の賜物です。それは、素粒子の構成から宇宙の終焉までをも解き明かす高度に発達した頭脳、社会組織化の基盤となる卓越したコミュニケーション能力、そして受容した刺激や経験を神経回路に刻みこむ脳の可塑性によるものです。ヒトゲノムの暗号が全て解読され、遺伝子の改変や光照射でニューロンの機能特性を自在に制御する新たな研究手法の登場により、分子や回路を基盤としたボトムアップ的な脳科学研究は一段と加速しています。また、脳の動作原理を先端的な脳機能イメージングや計測、計算論からトップダウン的に理解し、それをロボット工学や医療への応用を図る脳科学研究も活発になっています。さらに、少子超高齢社会を向かえた我が国では、成長期の発達障害、青年期以降に発症する精神疾患、加齢に伴い増加する認知症などは、社会的および経済的損失を伴う国家的問題となってクローズアップされ、その克服や予防を視野にいれた社会科学としての脳科学研究も強く求められています。

このような脳科学を取り巻く状況のなかで、北海道大学脳科学研究教育センターは全国の大学でもユニークな部局横断型の学内共同教育研究施設として、2003年9月に設置されました。センター設立の発端は、文部科学省・21世紀型革新的先端ライフサイエンス技術開発プロジェクト(Research Revolution 2002、通称RR2002)の採択です。これを受け、@脳科学に関する幅広い分野の研究を推進すること、A脳科学に関する幅広い知識を持つ人材を育成すること、を目的としてセンターが設立されました。2016年4月時点で、本学の12部局にまたがる33名の基幹教員(兼任)により運営され、「臨界期」、「コミュニケーション」、「先端計測」の3つの研究領域において融合的脳科学研究を推進しています。また、文部科学省・脳科学研究戦略推進プログラム課題F「精神・神経疾患の克服を目指す脳科学研究(健康脳)」(2011〜2015年)では、本センターの教員が中心となってドパミン神経系の観点から難治性気分障害の治療・診断、病態生理に関する研究も推進しました。

本センターは「発達脳科学専攻」を設置して、脳科学に特化した文理融合型のバーチャル大学院教育に力を注いでいます。この専攻では、「脳科学入門(7科目8単位)」や「脳科学研究の展開(8科目8単位)」などの系統的な講義実習科目を開設し、大学院共通授業科目として専攻履修生および一般の大学院生にも開講しています。さらに、合宿研修や研究発表会、複数の研究科の教員による修了論文の審査制度による修了認定など、専攻の教員と履修生が一体となってインタラクティブな研究教育活動を行なっています。現在まで、76名の修士課程修了生と22名の博士(後期)課程修了生を送り出しています。大学院組織の大幅な改組をせずに、社会のニーズに即応する知識や技術を習得した人材を育成するための新たな教育組織として注目されています。

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