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7月27日(土)、北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンターにて、サイエンスレクチャーが行われ、小中高生他43名が参加しました。「人獣共通感染症」とは、同一の病原体により、ヒトとヒト以外の脊椎動物(魚類・鳥類・哺乳類など)の双方に感染する病気のことで、インフルエンザなどがその例です。今回はその中でも、夏のアクティビティの大敵である「蚊」や、道内に生息する「マダニ」が媒介する人獣共通感染症にスポットを当てたレクチャーを実施しました。
(夏休み中の小中高生に加え、社会人の参加も)
はじめに
まず、主催者を代表して西嶌 一泰支社長(読売新聞北海道支社)、西井 準治創成研究機構長/理事・副学長より挨拶がありました。西嶌支社長は、感染症の歴史を紹介し、「このイベントで感染症や病原体のことを勉強しつつ、人間と野生動物の関係のあり方、人間と自然のあり方を考えるきっかけにして欲しいです」と話しました。西井理事・副学長は、人獣共通感染症について説明した後、「当センターは普段は入ることのできない施設なので、この貴重な機会にぜひ楽しんでいってください。また、143年実学研究を続けてきた北大ならではの研究を体感してもらえれば」と述べました。司会は、鈴木 定彦教授(人獣共通感染症リサーチセンター長)が務めました。
(ジェンナーの天然痘ワクチンの開発など、感染症の歴史について語る西嶌支社長)
(当センターについて説明する西井理事・副学長)
続いて、3名の講師からレクチャーがありました。
蚊学者になろう!
江下 優樹客員教授(人獣共通感染症リサーチセンター 招へい教員)が、「蚊が耳元にやってくると、どんな音がしますか」と問いかけると、会場からは「ブーン」と元気な返答が。「私は約40年間、蚊の研究をしているので、『蚊学者(ブンがくしゃ)』と名乗っています」。日本国内には生息していないネッタイシマカの顕微鏡画像を見せたり、ヒトスジシマカのオスとメスの見分け方をレクチャーしたりしました。「オスの触覚はメスに比べてフサフサしています。それから、蚊は卵を産むために血を栄養とするので、血を吸うのはメスだけです」。最後に、「『なぜ』という素朴な疑問を大切にして、一つ一つ解決していく。それが研究者への道です」とメッセージを送りました。
(蚊について幅広い知識を伝授する、江下客員教授)
蚊とマダニが媒介するウイルスの話
大場 靖子講師(人獣共通感染症リサーチセンター 分子病態・診断部門)は、蚊やマダニがウイルスを媒介する仕組みについて説明しました。自然界でウイルスと共存している野生動物などを蚊やマダニが吸血し、それによりウイルスを持った蚊やダニにヒトや動物が刺されることで感染症を引き起こします。蚊が媒介することで発症するデング熱や日本脳炎、マダニが媒介することで発症する重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) やダニ媒介性脳炎 (TBE)を紹介し、「飛行機でどこへでも行ける今の時代、日本では起きるはずのなかった病気も運ばれてきてしまう可能性があります」と呼びかけました。顕微鏡で、ウイルスに感染している細胞を見つける方法についてもレクチャーしました。
(普段はアフリカなどで蚊を採集し、ウイルスハンティングをしているという大場講師)
蚊とマダニの媒介する寄生虫の話
蚊やダニは、ウイルスだけでなく、寄生虫をも媒介します。とくに代表的なのは、ハマダラカが運ぶマラリア原虫によって感染するマラリアです。年間約44万人がマラリアによって死亡しています。寄生虫による感染症は、ヒトだけでなく動物にも脅威を与えます。ウシやイヌに感染することで知られるピロプラズマ病は、マダニによって媒介されます。林田 京子特任助教(人獣共通感染症リサーチセンター 国際協力教育部門)は、「アフリカでは、家畜のウシがこの病気で死んでしまうことによって、毎年100億円規模の酪農被害が出ているとされています。ピロプラズマ病は、日本でもワンちゃんにとても多い病気です。ペットを飼っている人は必ず薬を使って予防しましょう」と話しました。
(原虫病の恐ろしさについて訴えかける、林田特任助教)
後編では、蚊やウイルスの観察や施設見学の様子をお伝えします。
(総務企画部広報課 学術国際広報担当 菊池 優)
Science Lecture 2019「その危険、観察してみる?〜蚊、マダニを覗いて学ぶ感染症研究の最前線〜」
日時:2019年7月27日 (土) 13:00 – 15:30
場所:北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター
主催:北海道大学 創成研究機構、北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター、読売新聞北海道支社
共催:北海道大学 国際連携研究教育局 人獣共通感染症グローバルステーション
協力:北海道大学 総務企画部広報課、北海道大学 CoSTEP
連携:TERRACE -科学とアートが出会う場所-
後援:札幌市教育委員会
※Science Lectureは北海道大学 創成研究機構と読売新聞北海道支社が締結している協定のもとに開催しています。
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