インタビュー

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弁護士法人小畑法律事務所代表弁護士、歯科医師 小畑 真さん(1998年 歯学部卒業 2007年 歯学研究科博士修了 2010年 法科大学院修了)

歯科医師を目指して
歯学部で学び
全身管理を特色とする
歯科診療所へ

札幌で生まれ育ったので北大は身近な存在でした。両親が薬局を経営していたことから、もともと医療関係に興味があったのと、わりと手先が器用だったので、歯科医師が向いているかもしれないと思い、高校2年生の時、志望校を北大歯学部に決めました。国立の総合大学ということでキャンパスも可能性も“大きい”という印象がありましたが、実際に教養部では他学部の学生と交流でき、さらに歯学部では専門的な学問に打ち込めるので、すばらしい学びの環境だと感じました。

大学では、歯学部のバスケットボール部に所属し、6年間バスケ漬けの日々。勉強もそこそこ頑張っていましたが、部活中心の大学生活でした。練習に励んだ結果、大学2年の時には、全国の歯科大、歯学部29校のバスケットボール部が出場する全日本歯科学生総合体育大会で見事優勝を飾ることができ、今でも一番の思い出として心に残っています。

卒業後は歯科医師としてまずしっかりと臨床を学びたいと考えていました。また、高齢化社会が進む中、単に治療ができるだけではなく、呼吸・循環・代謝といった必須の生理活動を治療中に損うことのないよう、きちんと全身管理ができることが必要最低限の知識・技術であると考え、札幌の「日之出歯科真駒内診療所」に。この診療所は全国的にも珍しい病棟を持つ歯科診療所であり、一般歯科診療はもちろんのこと、入院施設で全身管理について経験を重ねつつ、さらなるスキルの向上のため、翌年から並行して北大の歯科麻酔科へも週に一度通い、研修を受けました。その後、2005年には、日之出歯科真駒内診療所の歯科医師として勤務しながら、北大の社会人大学院で歯科麻酔、歯科薬理に関する研修、研究を行い、研鑚を積むことができました。

現場の医療と法律の
架け橋になろうと
歯科医師から弁護士
という新たな道へ

さまざまな患者さんと接し、歯科医師として経験を重ねていく中、現場の医療制度と法律制度の間の“ずれ”を感じることが増えていきました。なかでも、私が最も衝撃的だったのが、当時、市立札幌病院の救急救命センターで歯科口腔外科医が研修医に対して救命措置の研修を行っていたことが、医師法違反にあたるとされ、刑事告発を受け裁判になったということです。その口腔外科医の先生はもともと私も知っている北大の先輩で、私自身も全身管理の研修を行っていたのでとてもショックを受けました。このことが一つの大きなきっかけとなり、現場のことを知っている者こそが医療と法律をつなぐ役割を担うべきだと思い、法律家を目指すことを決意。医師で弁護士というケースはありましたが、歯科医師で弁護士という前例はほとんど聞いたことがなかったことにも、挑戦意欲が駆り立てられました。

その後、弁護士を目指して北大のロースクール(法科大学院)へ。日中は講義、夜間や週末は非常勤歯科医師として、当直診療、夜間救急や休日診療を続けながら仕事と勉強に励み、二度目の挑戦で司法試験に合格することができました。

一年間の司法修習を経て札幌の法律事務所で経験を積み、2014年に独立し「小畑法律事務所」を開所。現在は札幌のほか、東京と横浜にもオフィスを構え、患者さんとのトラブル、院内でのスタッフや経営の問題など、医療関係のご相談を中心に手掛けています。また、大学の同窓会や歯科医師会、スタディグループ、学会などでの講演・セミナー活動のほか、論文や書籍、雑誌連載などの執筆活動、北大歯学部をはじめとする大学や専門学校での教育活動なども行っています。

仕事をする上で大切にしていることは、ただ目先の結果を求めない、ということ。もちろん相手のお困りごと、問題点についてはしっかり対応しますが、表面上は解決したように見えても、それが結果的に最良ではないと思った時は、“その奥にある真の解決”を追求します。これは歯科医師として診療していた時も同じ考えでした。

座右の銘は「never too late(=遅すぎることはない)」。弁護士を目指したのも一般的には遅すぎるスタートでしたし、ロースクールでひと回りも下の学生たちと共に学び、頭の柔軟さや体力の違いを思い知らされました…。それでも挑戦できたのは、何かを始める、何かを志すことに遅すぎることはない!という信念があったからだと思います。

弁護士としての一番の喜びは、相談者の方に喜んでいただき、笑顔になってくれた時です。医療も法律もその人の人生に直接関わることなので、微力ながらも私が関わることで、少しでも質の高い人生を歩んでゆくための転換になればと思っています。

情報があふれる
便利な時代だからこそ
答えを求め過ぎず、
自ら考えてほしい

私が学生の頃は、携帯電話がなく、インターネットもそれほど発達していなくて、情報収集の手段がとても少ない時代でした。今はいつでもどこでもだれでも簡単に情報を入手できる時代です。その情報が正しいか否かは別として…。便利な反面、すぐに答えを探してしまう。以前よりも考えようとする環境が失われているように感じます。情報があふれる時代だからこそ、あえて答えを求め過ぎず、自分の頭を使い、心で感じて学生時代を過ごしてほしいです。

受験生のみなさんは、それぞれ何かしらの目標を持って北大を目指していると思います。もちろん、目標を持つことは大切ですが、それを達成した段階で燃え尽きてしまったり、達成できず断念してしまうことも多々あるのが現実です。だから、目標のその先を見据えて今何をするべきかを考え、物事に取り組むことで目標が通過点になる―。その結果、目の前の目標もより叶いやすくなると思います。合格後の自分をイメージして頑張ってください。

弁護士法人小畑法律事務所代表弁護士、歯科医師 小畑 真さん(1998年 歯学部卒業 2007年 歯学研究科博士修了 2010年 法科大学院修了)
弁護士法人小畑法律事務所代表弁護士、歯科医師
小畑 真さん
(1998年 歯学部卒業 2007年 歯学研究科博士修了 2010年 法科大学院修了)
1973年横浜市生まれ。生後すぐに札幌市へ。大学卒業後、有床の歯科診療所に勤務しつつ研究生・社会人大学院生として歯科麻酔科の学びを続ける。歯科医療の現場と法制度のズレや、歯科医療の立場から法解釈に携わる人材(法律家)の不足に危機感を感じ、自ら法律家になることを決意し法科大学院へ進学。2011年、司法試験合格(2012年弁護士登録)。2014年、小畑法律事務所開所。2016年、弁護士法人小畑法律事務所設立。現在、札幌、東京、横浜にオフィスを構え、講演・セミナー等の他、大学や専門学校の客員教授・非常勤講師等として人材育成にも力を注いでいる。