研究グループ
臨界期における脳機能発達研究グループ
DNAに刻み込まれた遺伝子の機能発現調節により,その動物種に固有で画一的な初期シナプス回路の形成が保障されています.しかし,初期シナプス回路は過剰で混線が多く,機能的にも未熟です.
大脳皮質が発達している哺乳類,とりわけヒトの脳機構の成熟には,臨界期と呼ばれる感受性の高い生後早期に,適切な経験や環境刺激を受容し,それに応じた回路改築が起こることが重要です.この改築過程において,活性化された(使われた)シナプスが強化され,そうでない(使われなかった)シナプスは除去されることにより,高度に発達し個性的な脳機構が成熟します.
この研究グループでは,遺伝子制御と環境的修飾という観点から,臨界期における脳機能発達のメカニズムを分子・回路・システム・個体の各階層レベルで追求しており,主に次のような研究トピックがあります.
- 小脳シナプス回路発達の分子基盤
- 生物時計の発達 : その可塑性と臨界期
- 臨界期常道ストレスと行動変化
- Methamphetamineによる行動監査現象
コミュニケーションの発達研究グループ
言語コミュニケーションはヒトが成長していく過程で獲得する人間特異な能力ですが,その獲得には実は言語以前の非言語のコミュニケーション,さらにはより基礎的な認知過程の発達が深くかかわっていると考えられます.脳は他者との相互作用の方法をその発達の過程で学び,次第に優れたコミュニケーションを実現するようになります.コミュニケーションは歴然とした脳の過程であり,その理解はそのまま脳の知的発達の理解につながります.
この研究グループでは,教育学,心理学,言語学,情報科学,といった分野の研究者が,心理実験や,脳は,事象関連電位,近赤外分光法,fMRIなどの脳機能測定,データの数理的解析,現象の計算モデル化,脳神経的計算モデルによる実現といった多様な方法を融合させてコミュニケーションの発達の理解を目指しています.主に次のような研究対象があります.
- 脳内モジュールの統合と相互作用
- 計算論敵他者モデルの構築
- 幼児期の認知と情動の脳内過程
先端計測研究グループ
- MEGグループ
超伝導電子が示す特異な現象,超伝導量子干渉効果,を利用すると,他に追従を許さない超高感度な磁気線さ(SQUID: Superconducting Quantum Interference Device)が実現でき,その最高感度は量子力学的なゆらぎの限界にまで達している.SQUIDを用いると,神経活動によって生じる微弱な磁場(脳磁場)を頭部周囲から非侵襲的に検出できる.さらに,計測した脳磁場の発生源を逆推定することで,脳活動の時空間特性が可視化できる.MEGグループでは,"SQUID"をテーマに,脳機能の完全無侵襲計測・解析の研究を行っています.
- 光計測グループ
光計測グループでは,生物発光酵素や蛍光蛋白をコードする遺伝子を導入した遺伝子改変動物や培養細胞を用い,光を手がかりに細胞の機能を追い求めています.
脳機能の中でも,安定した約24時間のリズムを発信する生物時計は,分子から個体機能まで連続して解析可能な優れた実験系である.生物時計では,複数の時計遺伝子蛋白が相互に連動した転写調節フィードバックを形成してリズムを発振する.生物時計を実験モデルに,脳が時を刻むメカニズムを追及しています.
- fMRIグループ
fMRIグループでは,脳活動と相関のある酸素代謝現象を捉えることでヒトの脳機能の画像化が行うfMRI(functional magnetic resonance imaging)装置を用い,特に「前頭葉の機能発達」に着目して研究を行っています.前頭葉(特に前頭連合野)は,目的遂行のための一時的な記憶であるワーキングメモリや,環境の変化に応じた柔軟な行動ルールの変更といった高度な精神機能(高次脳機能)に中心的な役割を果たすと考えられていて,脳科学のみならず教育や発達の観点から注目されている脳領域です.