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第12回:長谷山 美紀 副学長
夢を与え、未来を切り拓く大学へ
私は、北海道で生まれ育ちました。小学生の頃は昆虫が大好きで、捕まえては図鑑で名前を調べたり飼ったりしました。昆虫の次は天体に興味を持ち、天文学者になろうと思いました。冬休みに毎晩星を観察しました。中学生になって英語を学び始めて、翻訳家になりたいと思いました。あの頃の私は、出会うもの全てが興味を持つ対象になっていたのだと思います。
このようにお話しすると、「理系を選んだきっかけは何ですか?」と尋ねられることがあります。質問された時には、いつも以下のようにお話ししています。
私は、自分自身が理系を選択した「きっかけ」を大変にはっきりと覚えています。小学校の算数の教科書の『奇数の和が整数の二乗になることを説明しなさい』という演習問題です。問題にはヒントとして、碁石が正方形に並んだ絵が示されていました。その絵には区切り線が描かれていました。左の角に黒い碁石が一つ、それに隣り合う3個の白の碁石との間に区切り線があり、さらに、その3個の碁石に隣り合う5個の黒の碁石との間に区切り線があり、1辺の碁石の数が大きくなっても、その区切り線は規則的に描かれていました。このヒントで、下の関係に気づくことになります。
1=12 |
ヒントとして与えられた絵
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「正方形に並べられた碁石の数は奇数の和で1辺の碁石の数の二乗と同じ値になる」と説明すれば、演習問題の解答になりますが、小学生の私は、この解答に納得することができませんでした。正方形の1辺がどれほど大きくなっても、「ずーっと、成り立つのだろうか?」と考えてしまったからです。「1辺が限りなく大きくなったら、正方形に並べられた碁石は歪んだりしないのか?」と考えました。
「なぜだろう?」を残したままで小学校を卒業し、納得できなかった事も忘れて中学校を過ごしました。その後、突然に私の「なぜだろう?」が解決することになります。高校の数学で総和記号「Σ」を学んだ時です。数年を経て、納得できる説明に出会うことができたのです。その時の驚きと感動を覚えています。学ぶことの楽しさと、知ることの喜びを教えてくれたように思います。私は高校で理科系のクラスに進み、数学や物理、そして化学も好きになりました。北海道大学の理系に入学し、工学部電子工学科で学び、大学院に進学しました。知ることの喜びは、生み出すことの感動に繋がり、研究があまりにも楽しくて、私は大学で研究者の道を選びました。
私は、『画像や映像を人間のように理解する次世代のマルチメディアシステム』について研究しています。この研究分野で作り出された技術が、インターネットの検索サイトで使われているとお話しすると、身近に感じていただけるかもしれません。新型コロナウイルス感染症対策で人々の学びや働き方が変化し、世界のデジタルデータは今までにも増して急激に増加し、その総量はおよそ59ゼタバイトと言われています。1ゼタバイトは1021バイトで、世界中の砂浜の砂粒の数に例えられます。未曽有の大量データから必要な情報を探し出す新たな手法を実現するために、世界で、AIや様々な分野の研究者が多様な視点で取り組んでいます。近い将来、画像や映像、音楽などの世界中のデータから、予想もしない新しい発見ができる検索システムが実現されると考えられています。
研究室では、沢山の学生や若手教員と一緒に、わくわくしながら未来を考え研究していた私ですが、2013年に大学運営に関わることになりました。結局、7年間総長補佐を務めて、文部科学省「大学トップマネジメント研修プログラム」を受講し、他大学の理事や副学長と共に海外大学の経営を学びました。2020年4月からは情報科学研究院長を、10月には副学長を務めることになりました。
副学長としての担当の一つは、大学IR(インスティテューショナル・リサーチ)です。学内に蓄積された学習成果や財務情報等のデータを収集・分析し、教育や研究、大学経営などに活用するもので、米国ではほとんど全ての大学に専門の部署が設置されています。本学でも、2015年に総合IR室を設置し、エビデンスベースの大学経営を実現するために、「IR戦略プラットフォーム構想」に着手しました。信頼される大学であるためには、経営の透明性が必須です。大学IRが果たす役割は大変に大きいと感じています。
社会が大きく変わろうとする時代に、次を担う若手教員と学生に、夢を与える未来志向の大学像を引き継ぎたいと思っています。北大から未来を切り拓く大きな視点の挑戦人材が生まれるよう前進して参りますので、ご支援をよろしくお願い申し上げます。
(2022年3月)
【撮影場所】
1枚目:情報科学研究院1F
2枚目:情報科学研究院2F渡り廊下
3枚目:情報科学研究院 メディアダイナミクス研究室 ミーティングルーム
4枚目:情報科学研究院 メディアダイナミクス研究室 教員・学生居室
5枚目:情報科学研究院前