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第13回:行松 泰弘 理事

「ここで学び、研究できてよかった」と心から思える大学に

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 理事の行松泰弘です。
 生い立ちから自己紹介させていただきます。

 「だんじり祭り」で有名な大阪南部の泉州地域で、両祖父、両親が教員という家庭で育ちました。兼業農家でもあり、休日も田植えや稲刈りなどに駆り出されました。時刻表で机上空想旅をしたり、ラジオの気象通報を聞いて天気図を書いたりするのが好きな内向的な子どもで、心配した両親は嫌がる私を無理やりスイミングスクールに入れたのですが、そのおかげで高校時代は水泳部の主将も務めるなど、生涯を通じた大きな自信につながりました。両親には感謝しています。
 北海道との最初のご縁は、高校1年の春休みの北海道一周一人旅でした。大阪から寝台特急「日本海」で青森へ、青函連絡船を経て急行「ニセコ」で札幌、そして寝台急行「まりも」で釧路に向かうという強行軍で、孤独感に打ちのめされていた私を温かく迎えてくれた、尾岱沼のユースホステルの方々の優しさは未だに忘れられません。その後、釧網本線、湧網線、興浜南・北線を経て浜頓別のユースホステルに泊まりました。泊り合わせた仲間と一緒に地元の中学生たちとバスケットボールをしたのも楽しい思い出です。本州から来た多くの大学生、高校生たちと交わり、旅が自分の世界を大きく広げてくれることを知りました。

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 大学で法学部を選んだのは、公務員になって政策形成に関与したい、という気持ちからでしたが、一方で海外での仕事の夢も捨てきれませんでした。法律討論会を主催するサークルに入り、法律の勉強に明け暮れながら、国際取引法のゼミに入り、企業人として海外で働くことも視野に入れていました。また、好きな旅と資金稼ぎを両立させるべく、夏休みに大阪と九州を結ぶ大型フェリーのアルバイト船員として働き、念願のオーストラリア一人旅を実現しました。

 運よく国家公務員試験に合格し、科学技術庁に入りました。若い役所で風通しが良いこと、加えて海外勤務のチャンスが格段に多いことも魅力でした。20代から30代にかけて、核融合、国際宇宙ステーション、ゲノム解析プロジェクトなど、様々な先端科学技術プロジェクトに関わるとともに、国会答弁の作成や、原子力安全に関する法令の整備、ロシアの気象観測船で3週間にわたって行われた、日本海の海洋環境に関する国際調査への参加といった仕事も体験しました。
 また、在ロシア日本大使館の科学担当外交官や軍民転換を担う国際機関の幹部として、トータル5年をモスクワで過ごしました。ロシアの役所との交渉はなかなか容易ではなく、街でも全く英語が通じないなど厳しい場面も色々ありましたが、それも含めて得難い経験です。

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 文部科学省(平成131月の中央省庁等の再編により文部省と科学技術庁が統合)では、教育関係の業務も様々経験しましたが、中でもアフガニスタンの教育支援のために2週間現地に出張した経験は忘れることができません。現地の治安が完全に安定しない中での出張は、かなりの緊張を伴うものでした。南部カンダハルでは、子どもたちは階段が破壊された校舎の2階に外から掛けられた梯子で出入りし、校庭に捨てられた戦車に登って遊んでいました。日本の支援で運営されている学校に行くと、子どもたちが外に飛び出していき、摘んできた野草の花を即席のフラワーアレンジメントでプレゼントしてくれました。女子教育が禁止されていた間、危険も顧みずこっそり女の子たちを教育し続けていた元教師の女性たちの存在を知りました。教育という仕事のすばらしさと、国際協力という形で学びを支えることの重要性を実感する経験になりました。
 また、内閣府の宇宙開発戦略推進事務局にも4年半在籍し、宇宙分野での安全確保に関する法体系の整備や、国際協力の推進といった仕事に携わりましたが、その中でも北大の宇宙分野のポテンシャルの大きさにはずいぶん助けられました。
 このように仕事やプライベートで訪問した国は50か国を超え、知り合えた人々や旅の経験は貴重な財産です。

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 北大では、以前、工学研究院の教員と、研究・経営マネジメントを担うURAステーション長を経験させていただきました。その時にお手伝いしたプログラムのいくつかが花開き、発展していることを見聞きできるのは本当に嬉しい限りです。今回の赴任にあたっても、多くの教職員の方々に「おかえりなさい」と言っていただき、胸が熱くなりました。

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 北大を、学生の皆さんや教職員が、「北大に来てよかった」と思える大学に、また、これまで以上に北海道、日本、そして世界に大きく貢献できる大学になるようお手伝いすることが、私の役割であると考えています。学びや研究活動を通じて、個々人がその持てる力を最大限発揮し、それぞれの人生を豊かに切り開いていけるように、また、日本の内外を取り巻く状況が厳しさを増している折に、知の拠点としての本学が、広く社会の中で今まで以上の役割を果たしていけるように、皆さんと一緒に頑張っていきたいと思っています。

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(2022年4月)

【撮影場所】
1枚目:フロンティア応用科学研究棟 レクチャーホール(鈴木章ホール)
2枚目:フロンティア応用科学研究棟 レクチャーホール(鈴木章ホール)
3枚目:フロンティア応用科学研究棟 ホワイエ
4枚目:事務局前
5枚目:創成研究機構前
6枚目:創成研究機構 2階 渡り廊下