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第14回:渥美 達也 副学長

日々の活動のモチベーションは郷土愛と愛校心

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 202241日より北海道大学副学長、北海道大学病院長を拝命いたしました。

 私は、1962年に倶知安町で生まれました。内科医であった父の転勤に伴い、幼少時の私は北大のすぐ近くのアパートに住んでいました。電車通りをこえて北大のキャンパス内で自転車にのる練習をしたり、当時父が研究をしていた煉瓦づくりの医学部の実験室でマウスの解剖をみせてもらったりしたことを覚えています。小学校から高校までは、小樽市で過ごしました。札幌や東京の小中学生とちがって高校受験というものを心配しなくてよい環境でしたので、学習塾へ通ったこともなく、毎日楽しくあそんだハッピーな小樽の少年でした。ただ、このころから人間のからだのしくみや病気についていろいろな本を読むようになって、ひとの役にたつ仕事をしたい、医学のみちをめざしたい、という気持ちをはっきりもっていたように思います。小樽潮陵高校に進学し、めざすものは大きかったわりに、そこはやはり地方都市、友人たちとずいぶんのんびりゆったり過ごしてきました。

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 1年の浪人ののち、19824月、念願かなって、かつて自転車にのる練習をした北海道大学に入学しました。いろいろな学部のひとと交流しよう、ということで、多少音楽のこころえがあったこともあり、入学式より前に北大合唱団に入団しました。北大合唱団は1915年創団で100余年の歴史をもつ古典的な男声合唱団で、当然ですが団員は男子しかいません。しかも、楽器を購入せずともカラダひとつでできるのが合唱ですので、恵迪寮生の比率も高く、非常に多様性のある猛者が集まっていました。多様性あふれるオトコたちをひとつのハーモニーにまとめるストイックさが男声合唱の魅力です。北大合唱団で知り合った先輩、友人、後輩たちとの交わりのなかで得られたものは、いまでもかけがえのない財産であり、北大に対する愛校心をいっそう強くするちからとなりました。都ぞ弥生の2番や5番をそらで歌えるのは合唱団に在籍したからであり、そのすばらしいフレーズをいまでもよく引用もします。

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 北大でそんな学生時代を過ごした後、1988年に医学部を卒業し、臨床と研究の両方をきわめようという一大決心のもと、医師としての研修と同時に大学院に入学して研究を早期にスタートすることにしました。医学部では大学の研究室と関連病院に勤めるそのOBとが「医局」とよばれる組織を作っていて、医師としての教育は通常医局に属してそのプログラムのなかでおこなわれます。したがって、研究室に入門することを「入局する」という表現をします。私は自己免疫疾患である膠原病の研究と診療を学ぶため、北大第二内科に入局しました。そして、ひとの2倍の努力をすれば目標達成できるはず、との信念で、実際にめいっぱい、体力のつづくかぎり研鑽をつみました。入局先の傑出した指導陣のおかげで、学位取得と2年半の市中病院での研修・勤務を含め、6年間で医師および研究者として何とか自立できる状態となり、1994年に教授のご高配によってロンドン・聖トーマス病院へ留学することができました。そこから研究業績を蓄積して、1997年に帰国、いまのキャリアを形成することになります。なお、留学先で同僚だったのが、スペイン国籍のいまの伴侶です。

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 留学から帰国後はそのまま出身教室に在籍して、2012年に教授就任、副研究科長、副病院長を経て、20224月から現職の北大副学長・北大病院長に就任しました。北大病院は約2,800人の職員が勤務し、医学部医学科・保健学科、歯学部の学生はもちろんのこと、道内のいろいろな教育施設からの研修生をうけいれており、北大のなかでももっとも大きな部局のひとつです。また、基本的な大学のタスクである研究と教育に加えて、医療サービスを市民に提供することで社会貢献をすることが理念にうたわれています。北大病院はいま満100歳です。開院以来の100年間で、医学・医療は指数関数的な発展をみせ、とりわけ2004年(平成16年)に北海道大学が法人化されてからわずか17年しかたっていませんが、その間の医療をとりまく環境の変化はめまぐるしいものがあります。この数年間だけをふりかえっても、大災害や新興感染症への対応など、あらたな課題が次々とあらわれています。そのようななかで、北大病院にかかわる人たちに最も必要なことは、お互いをプロフェッショナルとして信頼、リスペクトすることと信じております。北大病院の職員の皆様が、北大病院に勤務することに誇りと喜びをいっそう感じていただけるような環境づくりを目指しています。北大病院はいま再開発(改築)の準備をすすめています。再開発のテーマである「日本そして世界のリーディングホスピタル」をめざして、今後の北大病院の発展に尽力したいと考えております。

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 上述したように、私は生まれ、育ち、大学、職場とすべて北海道です。北海道大学には、キャンパス内での自転車の練習の時期を別にしても、数年の出張や海外留学の期間を含めて今年で40年間在籍しています。そのような背景なので、私の日々の活動のモチベーションは、郷土愛と愛校心によって成り立っています。

 皆様におかれましては、北大病院に一層のご支援とエールをいただけますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

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(2022年5月)

【撮影場所】
1枚目:アメニティホール
2枚目:温室
3枚目:渡り廊下
4枚目:外来診療棟玄関
5枚目:病院長室
6枚目:外来診療棟玄関