新着情報

ホーム > お知らせ > 【動画公開】森のなかの畜産研究(北方生物圏フィールド科学センター 静内研究牧場)

【動画公開】森のなかの畜産研究(北方生物圏フィールド科学センター 静内研究牧場)

北海道大学は、札幌や函館キャンパスにとどまらず、さまざまな場所に研究フィールドを有しています。札幌から150kmほど離れた、新ひだか町に位置する「静内研究牧場」もそのひとつ。南北に3.5km、東西に1.5kmひろがる静内研究牧場は約7割が森林に覆われており、牛およそ150頭、馬およそ100頭を、森林や森林内の牧草地で飼育しています。ここに常駐する研究者、河合正人牧場長(北方生物圏フィールド科学センター 准教授)は、こうした自然環境をいかした家畜生産について研究しています。


静内研究牧場「森のなかの畜産研究」北海道大学の施設・フィールド紹介

200403_news_shizunai1.jpg
河合正人牧場長。本学農学部で畜産学を学び、博士号を取得。
2015年に牧場長に就任して以来、当牧場でくらしながら研究をつづけている

草中心で肉牛を育てる

河合牧場長は、牧草や森林内の野草を利用した、肉牛生産の効率的な方法を模索しています。静内研究牧場で育てている牛は「日本短角種」とよばれる和牛です。放牧に適しているのが特徴で、食用の赤身肉として出荷されます。北海道や東北地方で飼育されており、黒毛和種などの他の和牛にくらべ、生産数が非常に少ないことでも知られています。

200403_news_shizunai2.jpg
日本短角種。約2年半で体重をおよそ700kgに増やし出荷する

一般的に日本の肉牛生産には、海外から輸入したトウモロコシや大豆などを、1頭あたり5tから6tもちいるとされています。静内研究牧場では、春から夏にかけて牛を牧草地に放ち、牧草や野草を食べさせます。そして、出荷前に体重を増やすためにのみ、輸入飼料を与えます。そのため、1頭あたりの輸入飼料の必要量は約1tと、通常の肉牛生産の五分の一ほどでまかなえます。「輸入飼料を与えて高級和牛を生産しブランド化していく世界も、もちろん守っていかなければなりません。私たちの生産方法は、その対極にあると思っています。人が利用できない植物を肉にかえてくれるという、草食家畜の最大のメリットをいかすために、輸入飼料に頼らない方法を追求していきたいです」と、河合牧場長は話します。

200403_news_shizunai3.jpg
森のなかのひらけた場所に放牧される牛たち

草中心で馬を育てる

森林で家畜を飼う「林間放牧」による馬の生産も、河合牧場長の研究テーマのひとつです。静内研究牧場で飼育している多くの馬は北海道和種「道産子(どさんこ)」で、春から秋にかけては牧草地で、冬は森のなかで過ごします。森に放たれた馬たちは、冬でも枯れることのない笹をえさとします。「どれだけの笹からどれだけの栄養を摂取できるのか、栄養学的な観点から研究しています。また、急斜面があったり沢があったり、当牧場は地形がとても複雑なため、馬が利用しやすい場所とそうでない場所があります。馬を追って観察するなど、行動学的な面でも調査をつづけています」。

200403_news_shizunai4.jpg
森林に放たれた道産子たち

林間放牧で道産子を生産しつづけるためには、えさとなる笹を絶やさないことも重要です。笹は、春や夏に光合成をして養分を地下にため込み、翌春にそのため込んだ養分で成長します。河合牧場長らの研究により、馬を3年つづけて夏のあいだ森へ放つと、笹がほぼ生えなくなってしまうことがわかりました1)。そのため、静内研究牧場では、笹を減退させないように養分をため込む時期をさけ、冬に林間放牧しています。

200403_news_shizunai5.jpg
冬は、たんぱく質が豊富なミヤコザサだけをえさとする

さらに、河合牧場長は、「道産子を森に放つことで、ほどよく草木がまびかれ人の歩きやすい状態になります。重機のかわりに道産子を森林管理に利用できるかもしれないし、人が散策しやすくなった森を観光資源としていかせるかもしれません」と、今後の可能性を語りました。

200403_news_shizunai6.jpg


さまざまな研究を融合できる場

河合牧場長は、静内研究牧場は畜産以外の研究にも適した場所だと考えています。「多くの植物が生息し、沢が流れ、野生動物たちがくらすこの場所を、さまざまな専門家に研究フィールドとして使っていただきたい。そうした方々と一緒に、森林生態系を維持しながらうまく家畜生産するためにどうしたら良いか、研究していきたいです」。

200403_news_shizunai7.jpg
取材時にあらわれた野生のエゾユキウサギ。
他にもエゾシカやエゾタヌキなど、様々な動物たちを目撃した

動画「森のなかの畜産研究」には、青々とした牧草を食む牛たちや、新たな放牧地を求めて疾走する馬たちの様子を収録しました。森のなかでたくましく生きる家畜たちの様子をご覧ください。


静内研究牧場「森のなかの畜産研究」北海道大学の施設・フィールド紹介

協力:北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 企画調整室 林忠一
制作:北海道映像アーカイブス
   北海道大学 総務企画部広報課 学術国際広報担当 川本真奈美 菊池優
   同大学 オープンエデュケーションセンター
   科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP) 早岡英介

200403_news_shizunai8.jpg

(総務企画部広報課 学術国際広報担当 菊池優)


【関連リンク】

1)河合正人・稲葉弘之・近藤誠司・秦 寛・大久保正彦(2000)北草研報34, 23 -27
北海道和種馬の夏季および冬季林開放牧がミヤコザサの生育に及ぼす影響

北方生物圏フィールド科学センター 静内研究牧場

いいね!Hokudai チェックイン #132 SDGsな牛肉に注目!