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L-乳酸輸送体が基質を選択するメカニズムを解明~基質輸送経路に存在する2つの残基の重要な役割~(薬学研究院 教授 井関 健)

2019年5月27日

ポイント

●ヒトモノカルボン酸輸送体の基質選択性に関与するアミノ酸残基を同定。
●同定されたアミノ酸残基は基質輸送経路を構築し,基質や近傍のアミノ酸残基と相互作用し得る。
●L-乳酸輸送体を標的とする医薬品の開発に期待。

概要

北海道大学大学院生命科学院博士課程・日本学術振興会特別研究員の二木悠哉氏,同大学大学院薬学研究院の井関 健教授らの研究グループは,ホモロジーモデリング法及び部位特異的変異導入法を用いて,ヒトモノカルボン酸輸送体1, 4(hMCT1, 4)の基質選択性に関わるアミノ酸残基を同定しました。

hMCT1, 4は,生体内でのエネルギー代謝に関わる化合物であるL-乳酸の輸送を担う輸送体です。これまでに,hMCT1はL-乳酸に加え5-オキソプロリンを輸送する一方で,hMCT4は5-オキソプロリンを輸送しないという知見が得られており,hMCT1とhMCT4の間にはその基質選択性の違いを決定する何らかの分子メカニズムの存在が予測されていました。そこで,研究グループはhMCT1, 4の予測3次元構造とアフリカツメガエル卵母細胞を用いたhMCT1, 4の輸送活性評価系を利用し,hMCT1選択的な5-オキソプロリン輸送に重要な2つのアミノ酸残基(69番目のメチオニン残基及び367番目のフェニルアラニン残基)を同定しました。

本研究により,hMCT1, 4の基質選択に関わるメカニズムの一端が明らかとなり,その構造と機能との関連に新たな知見を与えました。将来的に,L-乳酸輸送体が医薬品の新たな標的分子となることが期待されます。

なお,本研究成果は,2019年5月17日(金)にCellular and Molecular Life Sciences誌にオンライン掲載されました。

また,本研究は日本学術振興会科学研究費補助金(17J00013)の助成を受け,実施されました。

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hMCT1, 4のホモロジーモデルと基質輸送経路