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北海道の針葉樹は衰退している!~約40年間のモニタリングから原生林生態系への気候変動影響を解明~(北方生物圏フィールド科学センター 教授 日浦 勉)

2019年7月25日
北海道大学
森林総合研究所

ポイント

●北海道の原生林生態系が気候変動によって改変されていることを実証。
●夏期の気温上昇と降水量増加が原生林の針葉樹の成長に負の影響を与えていることを発見。
●台風の影響も針葉樹ではより深刻で,気候変動が原生林の姿を変えてしまうことを示す重要な成果。

概要

北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの日浦 勉教授らと森林総合研究所の飯島勇人主任研究員の研究グループは,気候変動によって原生状態の針広混交林に生育する針葉樹の割合が年々低下していることを明らかにしました。

気候変動は森林生態系に様々な影響を与えていると考えられていますが,樹種ごとの応答やそのメカニズムについてはまだ不明な点が多く,特に長期モニタリングデータに基づいた研究例はわずかです。

本研究では,北海道大学中川研究林の原生保存林において17.5ヘクタールに及ぶ森林の樹木1本1本を個体識別して成長や死亡などを約40年間モニタリングし,森林生態系の変化に対する気候変動や地形などの影響を調べました。その結果,夏期の気温上昇と降水量増加がトドマツなど針葉樹の成長に負の影響を与えている一方,イタヤカエデなど広葉樹の成長には正の影響を与えていることがわかりました。2004年の台風による死亡も,針葉樹でより深刻であることが判明しました。その結果,針葉樹の割合が約20%も減少した森林がありました。これらの結果は,気候変動によって森林の姿が大きく改変されるだけでなく,その機能にも影響を及ぼしてしまう可能性を示すものです。

本研究成果は,2019年7月22日(月)公開のForest Ecology and Management誌にオンライン掲載されました。

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北海道大学中川研究林の筬島原生保存林(photo:日浦 勉)