2019年11月8日
ポイント
●電流と磁性で情報記憶する素子用材料の電気化学酸化反応を巨視的なスケールで可視化。
●熱電特性と導電性原子間力顕微鏡観察を組み合わせた新可視化手法を開発。
●次世代情報記憶素子の開発を加速。
概要
北海道大学電子科学研究所の太田裕道教授と釜山大学校(韓国)のジン・ヒョンジン准教授らの研究グループは,電流と磁性で情報記憶する素子用の材料における電気化学酸化反応の可視化に成功しました。これは,次世代情報記憶素子の開発を加速する画期的な研究成果です。
研究グループは,2013年頃から酸素スポンジと呼ばれるコバルト酸ストロンチウム薄膜の酸化・還元反応を利用した電流と磁性で情報記憶する素子の開発に取り組み,2016年には素子構造の提案・試作に成功しましたが,情報切り替えの高速化という課題が残されていました。電気化学反応において,時間に関する問題を解決するためには化学反応式のような原子のスケールではなく,巨視的なスケールで材料の酸化・還元反応を可視化する必要があります。コバルト酸ストロンチウムの場合,材料科学分野で一般に用いられる透過型電子顕微鏡観察を適用できません。本研究では,熱電特性(電気抵抗率・熱電能)の計測と導電性原子間力顕微鏡(導電性AFM)観察を組み合わせた新しい可視化手法により,コバルト酸ストロンチウム薄膜の電気化学酸化反応を巨視的なスケールで可視化することに成功しました。
本研究成果は,コバルト酸ストロンチウム薄膜を用いた次世代情報記憶素子の開発を加速させるだけでなく,透過型電子顕微鏡観察が適用できない材料の電気化学酸化・還元反応の可視化を可能にします。
なお,本研究成果は,2019年10月22日(火)公開のAdvanced Materials Interfaces誌にオンライン掲載されました。
詳細はこちら