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動物が行動を選択する時の判断要因をコオロギから解明~今の確実さか?未来への備えか?~(理学研究院 教授 小川宏人)

2019年12月4日

ポイント

●コオロギは逃げる時,横や真後ろにもジャンプできることを発見。
●ジャンプ運動は速いだけでなく,逃げる方向は走るのと同じくらい正確であることを発見。
●それでも走って逃げるのは,もう一度襲われた時に対応できる可能性を考慮していることを示唆。

概要

北海道大学大学院理学研究院の小川宏人教授らの研究グループは,コオロギの逃避運動を詳細に計測して,動物が行動を選択する際に重要な「利益」が何なのかを明らかにしました。

人間は様々な状況で常に選択を迫られます。動物も同じように行動を選択し,それは時に生命に関わる重大な決断となります。例えば捕食者に襲われた時,適切な行動を選択できるかは生死に直結する問題です。行動選択では,その行動を選んだ場合にどのような「利益」が得られるかが重要です。捕食者からの逃避行動では,捕食者の攻撃を回避するために速さが重要な「利益」になります。しかし,多くの動物は素早い逃避行動だけでなく,遅い逃避行動も示すことが知られています。なぜ彼らは素早い行動以外も示すのでしょう?遅い逃避行動の「利益」とは何なのでしょう?

研究グループは,コオロギの歩行とジャンプという二つの逃避運動を詳細に計測して,このもう一つの「利益」が何なのかを調べました。その結果,ジャンプして逃げる方がより早く遠くに逃げられるだけでなく,逃げる方向も走って逃げるのと同じくらい正確でしたが,2回続けて刺激すると最初に走って逃げることを選択した方が,2回目の刺激にもきちんと反応できることを発見しました。コオロギは捕食者に続けて襲われた時のことも想定して,あえて走って逃げているのかもしれません。

なお,本研究成果は,2019年12月2日(月)公開のScientific Reports誌に掲載されました。

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A:コオロギの2種類の逃避行動(ランニングとジャンプ)。
B:ランニングとジャンプの移動速度(左)と移動距離(右)。ランニングに比べてジャンプでは移動速度が速く,距離も長い。
C:刺激角度に対するランニングとジャンプの移動方向。どちらも同様に移動方向が正確に制御されている。