2020年2月5日
ポイント
●半クローン生殖するアイナメ属野外雑種が,組み換え世代を持っていることを実証。
●クローンの弱点(有害変異の蓄積と多様性の欠如)を克服し,系統寿命を延長する仕組みを解明。
●クローン生物のゲノムが永続できる方法を発見したのは,世界初。
概要
北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの宗原弘幸教授と同大学院水産科学研究院の鈴木将太学術研究員らの研究グループは,半クローン生物が組み換え世代を取り入れることで,ゲノムをリフレッシュし,遺伝的多様性を獲得していることを明らかにしました。
アイナメ属は,ホッケと並び,北海道を代表するアイナメ科の磯魚です。この仲間には6種が知られ,その他にスジアイナメとクジメのゲノムを持つ雑種の生息が最近明らかになりました。アイナメ属の野外雑種はすべて雌で,受精して成体になるまでは父種(クジメ)ゲノムも使いますが,卵形成過程で消失し,母種(スジアイナメ)ゲノムだけがクローン的に子に受け継がれます。
アイナメ属雑種は,父種の雄と戻し交配をする限りクローンを保ちますが,母種の雄と交配するとスジアイナメゲノムが2セットになり,通常の減数分裂をする組み換え世代へ移行します。
本研究によって,雑種は両方の親種と同率で交配している(双方向戻し交配)ことが明らかになり,組み換え世代で有害変異の削減と遺伝的多様性を回復したのち,偶発的な交雑で半クローン世代に移行することが実証されました。本研究は,半クローン世代と有性生殖(遺伝子組み換え)世代を持つことで有害変異の削減と遺伝的多様性を回復するという仮説を実証し,クローンゲノムが永続的に存続できる仕組みを発見した世界で初めての研究です。
なお,本研究成果は,2020年1月7日(火)公開のEvolution誌にオンライン掲載されました。
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