ハイドロゲルは,その生体組織に類似したソフトでウエットな性質により,生体材料として大きな 注目を集めています。2003 年に龔(グン)らのグループによる高強度ダブルネットワークゲル(DN ゲル)の発明は,初めて軟骨などの構造生体材料としてハイドロゲルの高いポテンシャルを示しまし た。しかし,任意の特定の応用を実現するためには,生体適合性とともに剛性,強度,靭性,減衰, 耐疲労性,自己修復性など,複数の優れた力学特性の組み合わせが必要です。同グループはこれらの 特性を備え持つハイドロゲル材料群の開発に世界で初めて成功しました。この新材料は,内部に壊れ易い構造を導入すると材料全体が強靭になるという,同グループが発見した犠牲結合原理に基づきます。
今回は,両性高分子電解質(PA)を使って可逆的に破壊・回復できる内部構造を実現し,成果に繋がりました。これらのPA ゲルの特徴は,従来の高靱性DN ゲルより遥かに合成が容易である点で,多様なイオンの組み合わせを使用することにより,材料の剛性や粘弾性など複数の力学的特性を広い範囲にわたって調整することができます。これらのゲルは生体に無害です。本研究成果によって,人工軟骨などの生体構造材料としてゲルの選択肢が大幅に増加しました。また,高靱性な電解質膜として燃料電池にも応用できる可能性があります。
詳しくは、記者発表資料をご覧下さい。
記者発表資料(PDF)
8月2日、北大東京オフィスでの記者会見で説明する龔教授
本件に関するお問い合わせ先
北海道大学大学院先端生命科学研究院 教授
龔 剣萍(グン チェンピン)
TEL: 011-706-2774 FAX: 011-706-2774 E-mail:gong@mail.sci.hokudai.ac.jp
総務企画部広報課