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ヒトの必須脂肪酸EPA,DHAを作り分けるしくみを解明~DHA合成酵素をEPA合成酵素に改変することでEPAの発酵生産に道を拓く~(工学研究院 教授 大利 徹)

2019年4月2日

ポイント

● ヒトの必須脂肪酸「多価不飽和脂肪酸」は医薬品等として需要が拡大しているが,安定供給に課題。
● 微生物由来の酵素がEPAとDHAを作るしくみを応用し,DHA合成酵素をEPA合成酵素に改変。
● 微細藻類による発酵生産を用いた,多価不飽和脂肪酸の安定供給や海洋資源の保護に期待。

 

概要

北海道大学大学院工学研究院の大利 徹教授,佐藤康治助教,小笠原泰志助教らの研究グループは,ヒトの必須脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA,炭素鎖長20),ドコサヘキサエン酸(DHA,炭素鎖長22)について,微生物由来の酵素が両者を作り分けるしくみを解明しました。

多価不飽和脂肪酸は分子内に二重結合を複数持つ脂肪酸の総称であり,EPAやDHAが知られています。これらは生命維持に欠かせない必須脂肪酸ですが,ヒトは体内で合成(生合成)できず,食物等から摂取しなければなりません。しかし,主要な摂取源である魚は現代の食生活では不足しがちであり,それを補う医薬品や栄養補助食品としての需要が拡大しています。

現在,原料として魚油が用いられていますが,漁獲量が不安定なことや乱獲による資源枯渇が危惧され,海洋資源に依存しない新たな供給源が求められています。実は,魚もヒトと同様EPAやDHAを生合成できず,それらを作ることができる海洋性微生物を食べることで体内に取り込んでいます。そのため,海洋性微生物である微細藻類を利用して直接発酵生産する方法が注目されています。

発酵生産に用いられる微細藻類はDHAしか生産できず,EPAの需要を満たすことはできません。そこで研究グループは,今回新たに海洋性微生物由来の酵素が両者を作り分けるメカニズムを解明しました。さらに得られた結果に基づいて,微細藻類の実用DHA合成酵素をEPA合成酵素に改変することにも成功しました。今後,本酵素によるEPAの発酵生産が期待されます。

なお,本研究成果は,化学系トップジャーナルの一つである Angewandte Chemie International Editionにドイツ時間2019年3月7日(木)に掲載されました。

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