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引っ張ると白い蛍光を出すゴムの開発に成功~材料が受けるダメージの可視化に期待~(電子科学研究所 助教 相良剛光)

2019年4月24日
北海道大学
Adolphe Merkle Institute
科学技術振興機構

ポイント

●伸縮により白色蛍光のON/OFFを瞬時に何度でも切り替えるゴム材料の開発に成功。
●蛍光を発する部分を変えても,同じメカニズムでほぼ同じ刺激応答性を獲得できることを実証。
●共有結合を切らずとも機械的刺激により発光特性が変化する「超分子メカノフォア」の分野を開拓。

概要

北海道大学電子科学研究所の相良剛光助教(科学技術振興機構(JST)さきがけ研究者),玉置信之教授,スイス フリブール大学Adolphe Merkle InstituteのChristoph Weder(クリストフ ウェダー)教授らの研究グループは,伸縮により白色蛍光のON/OFFを瞬時に可逆的に切り替えるゴム材料の開発に成功しました。

最近,主に高分子化学の分野で,力(機械的刺激)によって共有結合が切断され,色変化,触媒作用,化合物の放出といった様々な応答を示す「メカノフォア」と呼ばれる分子骨格が着目されています。しかし既存のメカノフォアは共有結合を切断する必要があるため,可逆性に乏しい等の問題がありました。このような背景を踏まえ,研究グループは,超分子化学の分野で長年研究されてきた,インターロック分子の一つであるロタキサンに着目し,共有結合を切断する必要のない「超分子メカノフォア」の開発を行ってきました。今回の報告では,青色,緑色,橙色の蛍光団(蛍光を発する部分)を用いたロタキサン型超分子メカノフォアを開発し,さらにポリウレタンに導入することで,伸縮に応答して各蛍光色が瞬時,かつ可逆的に何回でも繰り返しON/OFFスイッチするゴム材料を開発しました。これにより,蛍光団を変えても同じメカニズムで類似の機械的刺激に対する応答性を獲得できることを実証しました。さらに,これら三種のポリウレタンを適切な割合で混合することにより,白色蛍光のON/OFFスイッチを示すゴムを実現しました。このような材料は,様々な材料が受けるダメージの可視化などへの応用が期待でき,今後の本分野の発展に大きく寄与すると考えられます。

なお,本研究成果は,日本時間2019年4月24日(水)午後9時(アメリカ東部夏時間2019年 4月24日(水)午前8時)公開のACS Central Science誌にオンライン版として掲載されました。

本研究は,JST戦略的創造研究推進事業さきがけ「光の極限制御・積極利用と新分野開拓」(研究総括:植田憲一)における「ロタキサン型メカノプローブの創製とメカノバイオロジーへの応用」(研究者:相良剛光)(No. JPMJPR17P6),人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス,公益財団法人新世代研究所 研究助成,公益財団法人江野科学振興財団 田中ゴム科学技術賞等による支援を受けて行われました。

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