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植物の葉のクチクラの構造を分子レベルで解明~クチクラの構造モデルの常識を覆す発見~(低温科学研究所 助教 羽馬哲也)

2019年5月9日
北海道大学
京都大学

ポイント

●植物の葉の表面を覆う脂質膜「クチクラ」の分子レベル構造を,非破壊分析することに成功。
●クチクラの外部に多糖類が存在することを発見し,これまでのクチクラの構造の常識を覆す。
●環境ストレス耐性,病原菌や害虫に対する抵抗性を持つ植物や生体模倣材料の開発への応用に期待。

概要

北海道大学低温科学研究所の羽馬哲也助教,京都大学化学研究所の長谷川健教授らの研究グループは,植物の葉の表面を覆う脂質膜である「クチクラ」の分子の構造を解明することに成功しました。

クチクラは,雨や乾燥などの様々な環境ストレスに対して防御の役割を果たす非常に多機能な薄膜です。これまで,クチクラを構成する分子の種類(炭化水素のワックス,クチンと呼ばれるポリエステル,多糖類など)の同定に関する研究は進んできましたが,葉の表面における分子の並び方(分子配列)や分子の向き(分子配向)についてはわかっておらず,クチクラが持つ機能の本質を理解するには至っていませんでした。

そこで,本研究では偏光変調赤外反射吸収分光法を用いることで,ヤセイカンランの葉のクチクラを前処理(溶媒による抽出など)することなくそのままの状態で非破壊分析し,ワックス,クチン,多糖類の配列・配向を分子の官能基レベルで明らかにすることに世界で初めて成功しました。また,これまでのクチクラの構造モデルでは「クチクラの外部(表面近傍)には多糖類は存在しない」と考えられてきましたが,本研究によって「クチクラの外部に多糖類(ヘミセルロース)が存在する」ことが明らかとなりました。この結果はこれまでのクチクラの構造の常識を覆し,クチクラの構造モデルを大きく改善するものです。これにより,クチクラの機能の起源に迫るとともに,環境ストレスや病原菌や害虫に対する耐性を持つ植物への品種改良,生体模倣材料の設計・開発にもつながると期待されます。

なお,本研究成果は,2019年4月24日(水)公開のPlant and Cell Physiology誌に掲載されました。

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偏光変調赤外反射吸収分光法によるヤセイカンランの葉の測定の様子