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30年前に予言された四極子近藤効果の直接観測に成功〜超音波で観る希土類金属化合物の単サイト四極子近藤効果〜(理学研究院 准教授 柳澤達也)

2019年8月8日
北海道大学
広島大学

ポイント

●プラセオジムを含む単結晶を0.04Kの極低温まで冷却し,超⾳波を⽤いて弾性率を精密測定。
●通常の⾦属とは異なり,極低温領域で物質が温度の対数に⽐例して柔らかくなる振る舞いを発⾒。
●⻑い間実験的な証拠が得られていなかった単サイト四極⼦近藤効果を,世界で初めて直接観測。

概要

北海道⼤学⼤学院理学研究院の柳澤達也准教授,⽇⾼宏之助教,網塚 浩教授,ヘルムホルツ研究センタードレスデン強磁場研究所(ドイツ)のセルゲイ ツェリツィン博⼠,ドレスデン⼯科⼤学(ドイツ)のヨハン ヴォスニッツァ教授,広島⼤学⼤学院先端物質科学研究科博⼠課程後期学⽣の⼭根 悠⽒,⻤丸孝博教授らの国際共同研究グループは,4f軌道に2つの電⼦を持つプラセオジム(元素記号:Pr,原⼦番号59)を希薄に含む化合物の弾性率(モノの硬さの⼀つの指標)が,絶対温度0.3K以下の極低温領域で温度の対数に⽐例して減少する(柔らかくなる)ことを⾒出しました。この特徴的な温度依存性は,磁場を加えることによって抑えられ,低温で弾性率が⼀定値に収束する通常の⾦属間化合物の応答に戻るため,単サイトのPrの基底状態に由来する多体効果による現象であることが強く⽰唆されます。

この弾性率の対数的な温度依存性は,約30年前に予⾔された単サイトの四極⼦近藤効果の予⾔と⼀致します。本研究では,フラックス法によって作製したPr希薄系カゴ状化合物(Y0.966Pr0.034Ir2Zn20)と,Prを含まない⾮磁性のYIn2Zn20の純良な単結晶を,液体ヘリウム4とヘリウム3を混合した希釈冷凍機で絶対温度0.04Kまで冷却し,極低温領域において試料に横波超⾳波を⼊射することで弾性率を精密に測定しました。

さらに超伝導磁⽯を⽤いて,強⼒な磁場をかけてバックグラウンドを正確に⾒積もることで,世界で初めて単サイトの四極⼦近藤効果の直接観測に成功しました。これまでにも電気抵抗や⽐熱によって間接的な証拠が報告されてきましたが,それらが四極⼦近藤効果の問題の「外堀」を埋める作業だとすれば,問題解決の決め⼿である電気四極⼦の応答を直接捉えた本研究成果は,「本丸」を攻め落とし決着をつけたとも⾔えます。また,本研究成果は,固体中の電⼦の持つ多様な量⼦⾃由度を制御し,それらを応⽤に結びつけた新しい量⼦情報素⼦等の開発など,将来に向けて幅広い分野での基礎となる重要な成果です。

なお,本研究成果は,⽶国時間2019年8⽉6⽇(⽕)公開のPhysical Review Letters誌(オンライン版)に掲載されました。

また,本研究は,⽇本学術振興会科学研究費助成事業基盤研究C(17K05525),基盤研究B(18H01182),新学術領域(研究領域提案型)「J-Physics:多極⼦伝導系の物理」(15H05882)(研究代表者:播磨尚朝)における計画研究班「C01:拡張多極⼦による動的応答」(15H05885)(研究代表者:網塚 浩),同計画研究班「D01:強相関多極⼦物質の開発」(15H05886)(研究代表者:野原 実),同公募研究班「電流と格⼦回転・歪みによる複合共役場を⽤いた拡張多極⼦検出の試み」(18H04297)(研究代表者:柳澤達也)の⼀環として⾏われました。

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