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板海苔原材料アマノリの生活環を70年ぶりに完全解明~海藻における未知で特殊な生存戦略の理解に期待~(水産科学研究院 准教授 三上浩司)

2019年8月9日

ポイント

●日本人に最も身近な健康食品である海苔の原材料となるアマノリ類の生活環を完全解明。
●戦後発表された定説で見落とされていた問題点を70年ぶりに解明。
●植物の生活環の多様性と進化の理解や日本で定着していない海藻の基礎生物学研究の進展に期待。

概要

北海道大学大学院水産科学研究院の三上浩司准教授らの研究グループは,佐賀大学農学部との共同研究で,板海苔の原材料で日本人と関わりの深いアマノリ類の生活環に関する新説を発表しました。

過去のアマノリ類における研究の中で最も重要な発見といえば,1949年にイギリス人研究者のドリュー博士によって発表された生活環の解明です。アマノリ類は,冬に食用となる葉状の配偶体と夏に糸状の胞子体の2つが交互に交代する生活環を持ちます。当時,糸状体は別の海藻とされていましたが,ドリュー博士は糸状体から放出される胞子から葉状体が作られることを発見し,アマノリ類の生活環をはじめて解明しました。

一方で,アマノリ類では減数分裂が配偶体の成長過程で起こるとされていましたが,これまでの研究は,これが配偶体形成は減数分裂を介するという原則に反している事実を見逃していました。自然界では環境変動などへの対応時に減数分裂に依存しない配偶体形成,すなわちアポスポリーが観察されますが,これは通常ほとんど見られません。しかし,研究グループは,アマノリ類では糸状体上に形成される殻胞子嚢でこのアポスポリーが常に行われており,これが減数分裂の前に配偶体形成を可能にしている原因であることを発見しました。また,これまでは糸状体と殻胞子嚢を合わせて胞子体世代としてきましたが,これらは形態に加えて遺伝子発現の様子も大きく異なっており,さらに陸上植物の世代交代を制御している遺伝子と同じものがアマノリでは殻胞子嚢で強く発現していました。

以上の研究成果により,研究グループは,アマノリでは配偶体形成が減数分裂に依存しないアポスポリーによっていること,また糸状体と殻胞子嚢は異なる世代であり,アマノリ類の生活環はそれらに葉状体を加えた三相性であること,などの新発見を取り入れた新説を提唱しました。この研究は, これまで不明な点が多かったアマノリ類を含む紅藻の生活環を完全な形での正しい理解を促すと評価されています。

なお,本研究成果は,2019年8月7日(水),Springer Nature社発行のオープンアクセス・ジャーナルCommunications Biology誌に掲載されました。

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