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植物の老化や紅葉には,バクテリアの遺伝子が関わっていた~酵素の本来の役割とは異なる触媒活性が新しい代謝系の誕生に重要であることを解明~(低温科学研究所 助教 伊藤 寿)

2019年9月6日

ポイント

●クロロフィルを持たないバクテリアが,植物のクロロフィルを分解する遺伝⼦を持つことを発⾒。
●植物の祖先はバクテリアからこの遺伝⼦をもらい,クロロフィル分解経路を作ったことを解明。
●本来の役割と異なる酵素の触媒機能が将来の代謝系の進化に重要であるという仮説を提唱。

概要

北海道⼤学低温科学研究所の伊藤 寿助教,北海道⼤学⼤学院⽣命科学院博⼠後期課程の⼩畑⼤地⽒らの研究チームは,植物の祖先がバクテリアから酵素を獲得し,それを利⽤してクロロフィルの分解系を作ったことを解明しました。

植物の光合成に関わるクロロフィルはマグネシウムを中⼼⾦属として持っています。クロロフィルの分解は,このマグネシウムがマグネシウム脱離酵素により外されることによって始まります。この反応は植物の⽼化や紅葉に中⼼的な役割を果たしています。興味深いことに,植物のマグネシウム脱離酵素と似たタンパク質がクロロフィルを持たないバクテリアに⾒つかったことから,その酵素活性を調べたところ,クロロフィルのマグネシウムを脱離する活性を持ち,植物の酵素より⾼い活性を⽰すことがわかりました。ただし,この酵素はバクテリアの中ではクロロフィル分解には関わらず,本来は別の働きをしていると予想されます。また,分⼦系統解析の結果,植物の祖先がバクテリアからこの酵素を遺伝⼦の⽔平伝播によって獲得したことがわかりました。

これらの結果はバクテリアの酵素が偶然クロロフィルを分解する活性を持ち,それが植物に取り込まれることによって植物がクロロフィルを分解できるようになったことを⽰しています。この成果は新しい酵素や代謝系の獲得機構の解明に貢献すると期待されます。

本研究成果は,協定世界時2019年9⽉5⽇(⽊)午後9時公開のMolecular Biology and Evolution誌に掲載されました。

なお,本研究は⽇本学術振興会科学研究費助成事業の新学術領域研究(16H06554),特別研究員奨励費(18J20898)等の⽀援を受けて⾏われました。

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