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地球温暖化は高山植物群落の開花シーズンを短縮する~市民ボランティアにより明らかにされた温暖化影響予測~(地球環境科学研究院 准教授 工藤 岳)

2019年9月11日
北海道大学
モニタリングサイト1000

ポイント

●市民ボランティアによる高山植物の長期開花調査データを解析し,温暖化影響予測を実施。
●気温上昇と雪解けの早まりの影響を強く受け,全体の開花期間は約5日間短縮すると予測。
●市民ボランティアによる生態系モニタリングの有効性を実証した重要な研究成果。

概要

北海道大学地球環境科学研究院の工藤 岳准教授は,市民ボランティアと共同で,北海道大雪山における高山植物の長期開花調査を行い,地球温暖化によって高山植物群落の開花期間が将来どのように変化するのかを予測しました。

高山植物の開花時期は温度や積雪期間の変化に敏感であるため,地球温暖化の影響を強く受けると予測されていますが,その実態と将来予測に必要なモニタリング例はごくわずかでした。

そのため本研究では,環境省生物多様性センターが行っている生態系長期モニタリングプロジェクト「モニタリングサイト1000」の高山帯調査の一環として,市民ボランティアによって集積された高山植物開花調査データを解析しました。詳細な開花状況と気温・積雪データの解析により,気候変動に対して高山植物群落の開花時期がどのような影響を受けるのかを予測しました。その結果,積雪の少ない場所に生える高山植物は気温の影響を強く受け,温度が高いほど開花の進行が早く,1度の気温上昇により開花期間は約4日間短縮されると予測されました。一方で雪解けの遅い場所に生育する植物は,気温よりも雪解け時期の影響を強く受けることが明らかになりました。更に温暖化によって1度の気温上昇と10日間の雪解けの早期化が起こった場合,高山帯の開花時期は約5日間短縮されるという予測が得られました。温暖化に伴う高山植物群落の開花シーズンの短縮は,花を利用する昆虫へも影響が及ぶことが懸念されます。本研究は,市民ボランティアによる生態系モニタリングの有効性を実証したものとして重要な成果です。

本研究成果は,2019年8月2日(金)公開のEnvironmental and Experimental Botany誌に掲載されました。

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市民ボランティアによる調査風景