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薬剤耐性神経膠芽腫幹細胞に有効な化合物の同定~神経膠芽腫の根治薬の創出に期待~(遺伝子病制御研究所 教授 近藤 亨)

2019年10月7日

ポイント

●神経膠芽腫を特異的に殺傷する化合物の同定を目的としたスクリーニングを実施。
●スクリーニングにより化合物10580を同定するとともに,その標的因子及び分子機構を解明。
●化合物10580が,神経膠芽腫などの難治性腫瘍に対する新たな治療薬になることを期待。

概要

北海道大学遺伝子病制御研究所の近藤 亨教授らのグループは,薬剤耐性神経膠芽腫幹細胞に有効な化合物の同定に成功しました。

神経膠芽腫に対する新規治療法開発の取り組みが行われているにも関わらず,罹患患者の予後は未だ芳しくない状況が続いています。この原因の1つは,高い浸潤能力,腫瘍形成能,抗がん剤・放射線療法に抵抗性を示す“がん幹細胞”の存在であると考えられています。近藤教授らのグループは, 神経膠芽腫に対する標準治療薬テモゾロミド(TMZ)に抵抗性を有するヒト神経膠芽腫幹細胞を樹立し,富士フイルム株式会社が所有する化合物ライブラリーを用いた細胞傷害スクリーニングを行い,TMZ抵抗性神経膠芽腫幹細胞を特異的に傷害する化合物10580を同定しました。次いで,産業技術総合研究所との共同研究により,10580の標的因子がジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHODH)であることを発見しました。また,10580の薬効メカニズムを解析する過程で,10580がTMZ抵抗性神経膠芽腫幹細胞の幹細胞性を剥奪することも発見し,その分子機構の一端を明らかにしました。更に,TMZ抵抗性神経膠芽腫幹細胞を移植した担がんマウスに10580を経口投与したところ,強い抗腫瘍効果を有することを確認しました。これらの優れた抗腫瘍効果に加えて,様々な正常細胞に低毒性で,マウス個体に懸念される副作用を示さないことから,10580が神経膠芽腫に対する新たな治療薬となりうることを見出しました。

本研究は,北海道大学遺伝子病制御研究所幹細胞生物学分野,同大学院医学研究院脳神経外科教室,富士フイルム株式会社,産業技術総合研究所との共同研究の成果です。

なお,本研究成果は,2019年9月10日(火)公開のNeuro-Oncology誌のオンライン版に先行公開されました。

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