新着情報

ホーム > プレスリリース(研究発表) > 神経伝達トリガー分子の新たな局在制御機構を発見~シナプス病の分子基盤理解に貢献~(薬学研究院 准教授 多留偉功)

神経伝達トリガー分子の新たな局在制御機構を発見~シナプス病の分子基盤理解に貢献~(薬学研究院 准教授 多留偉功)

2019年10月7日

ポイント

●電位依存性カルシウムチャネルの神経プレシナプスへの局在機構を線虫シー・エレガンスから発見。
●二種類のシナプス足場タンパク質が冗長的(重複的)にはたらくユニークなメカニズムを解明。
●精神疾患や神経変性疾患などのシナプス病の分子基盤理解と治療薬探索への貢献に期待。

概要

北海道大学大学院薬学研究院の多留偉功准教授らの研究グループは,神経伝達のトリガー分子である電位依存性カルシウムチャネル(VGCC)の局在が,二種類の足場タンパク質によって冗長的(重複的)に制御される,という新たな分子機構を発見しました。

脳神経系の高度な情報処理機能の基盤は,シナプスと呼ばれる神経細胞間の接着構造を介した情報伝達です。出力側であるプレシナプス(シナプス前部)に伝達の引き金を引くVGCCが正確に集積・局在することが必須であり,その分子機構の全容解明は神経科学分野の重要課題の一つです。

研究グループは,無脊椎モデル動物である線虫シー・エレガンスにおいて機能未知であったRIMB-1という分子を解析し,VGCCの足場としてのはたらきを見出しました。また,系統的な遺伝学的解析とスクリーニングによって,VGCCの局在制御には多数のプレシナプス足場タンパク質の中でも特にRIMB-1とUNC-10の二種類が必須であり,それらが重複した機能をはたすことを明らかにしました。さらにRIMB-1とVGCCの局在が,双方向的な制御関係にあることを提唱しました。

これらのファミリー分子はヒトにも存在し,自閉症をはじめとした様々な精神・神経疾患への関与が示唆されています。本研究成果は,脳神経系の分子レベルでの理解に重要であるとともに,それらの疾患の分子的理解や治療薬開発への貢献が期待されます。

なお,本研究成果は2019年9月17日(火)公開のJournal of Neuroscience誌に掲載されました。

詳細はこちら


研究成果の概念図。神経伝達を担うプレシナプスには,多数の機能分子や足場タンパク質(灰色)が 複雑な相互作用(実線)を介して組織的に集積している。線虫において,電位依存性カルシウムチャネル(VGCC)の集積・局在には二つの足場タンパク質RIMB-1とUNC-10による重複的な制御 (赤矢印)が重要であり, さらにRIMB-1とVGCCが双方向的な制御関係にある(ピンク矢印)ことが明らかになった。