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紫外線照射で純氷にマイナスの電気が流れることを発見~氷の新しい電気的性質が明らかに~(低温科学研究所 教授 渡部直樹)

2019年10月9日

ポイント

●氷内部にマイナスの電気が定常的に流れうることを初めて発見。
●マイナスの電流は紫外線照射で精密にコントロールが可能。
●マイナス電流の振る舞いは,従来から知られていたプラス電荷を持つ陽子による電流と全く異なる。

概要

北海道大学低温科学研究所の渡部直樹教授らの研究グループは,真空中で極低温の純氷を作製し,そこへ紫外線と電子を照射することで氷中にマイナスの電気が流れることを発見しました。また,その電流は紫外線のオン・オフで鋭敏にコントロールできることがわかりました。従来,氷は金属とは異なり,その内部に自由に動き回れる電子(マイナスに帯電)を持たないため,電子の流れによる電流をほとんど通さないと考えられていました。そこで研究グループは,この現象を説明するために理論計算を行い,紫外線を照射することにより氷表面の水分子(H2O)が分解し,OHが生成され,そのOHが氷内で電子を運ぶマイナス電気のキャリアとなって動き回ることを明らかにしました。発見した現象は,氷内に電気を流すための電解質の不純物を一切必要としません。

氷はその内部にもともと微量に存在する動き回れる陽子(プラスに帯電)が水分子の間を移動することにより,わずかながらプラスの電気が流れるため,半導体としての性質を持つことが知られています。しかし,陽子の移動には熱エネルギーが必要なため,およそマイナス80℃以下では電流が流れないことがわかっています。研究グループはマイナス220℃以下でも温度に依存することなくマイナスの電気が流れることを確認しており,本研究で発見したマイナス電気の移動には熱エネルギーを必要としないことを示しました。

本研究では,従来全く想像されていなかった以下の3つの知見が画期的といえます。①氷中にマイナスの電気が定常的に流れうることを発見した。②マイナスの電気の流れは紫外線でコントロールできる。③従来知られていた氷中のプラス電気の流れとは異なり,極低温でも電気が流れる。

今後は,この現象をより幅広い温度領域で,氷の構造,紫外線強度などを変えて調べていく予定です。水や氷は,これまで長年様々な分野で研究されてきた,いわばありふれた物質です。本研究は,そうした氷にもまだ知られていない側面があることを示しており,水や氷の科学のさらなる展開のきっかけになると期待されます。

なお,本研究成果は,2019年10月3日(木)公開のChemical Physics Letters誌に掲載されました。

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