2019年10月31日
北海道大学
ポイント
●北日本のコンブ 11 種について,出現記録と海洋環境情報を基に,分布を推定するモデルを作成。
●多くの種で 2090 年代までに分布域が北上し,日本の海域から消失する種もあることが判明。
●藻場の保全やコンブ漁業の維持のためにも地球温暖化対策を一層進める必要性を指摘。
概要
北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの仲岡雅裕教授,同大学院環境科学院の須藤健二氏らの研究グループは,北日本のコンブ類の分布域が今後地球温暖化の進行に従って大きく減少すること,また分布が限られている複数の種が日本の海域から消失する可能性が高いことを明らかにしました。
地球温暖化に伴い,日本沿岸の海洋生物の分布や生物量が大きく変化していることが明らかになりつつあります。北海道や東北地方で主要水産資源となっているコンブ類も 20 世紀後半以降,分布域や生物量の大きな変化が観察されており,水温上昇などの影響が指摘されていますが,今後の変動については十分な予測はされていませんでした。
そこで研究グループは,北日本に分布する主要なコンブ 11 種について,既存の生物多様性データベースを用いて過去から現在にわたる分布情報を収集し,温暖化が顕著になる前の 1980 年代における各種の分布域を推定するとともに,今後の地球温暖化シナリオに基づき,2040 年代,2090 年代における分布の変化を予測しました。
その結果,解析対象としたコンブすべての種で,今後分布域が大幅に北上する,もしくは生育適地が消失する可能性があることが予測されました。特に温暖化の進行が著しいとするシナリオでは,北日本におけるコンブの分布域は,2090 年代には 1980 年代の 0~25%になりました。また温暖化が緩やかに進行するシナリオでも 11 種中 4 種のコンブが 2090 年代に日本の海域から消失する可能性があることが予測されました。本研究の成果により,北日本の沿岸生態系の保全及び持続的な水産業を維持するためには,地球温暖化対策を一層進める必要があることが示されました。
なお,本研究成果は, 2019 年 10 月 28 日(月)公開の Ecological Research 誌に掲載されました。
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