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海水中で繰り返し使用できる接着剤を開発~海洋付着生物「イガイ」に学んだモノづくり~(化学反応創成研究拠点 教授 龔 剣萍)

2019年11月13日

ポイント

●海水中で素早く強力に接着し,繰り返し使用可能な新規接着剤の開発に成功。
●本接着剤の化学構造は,海洋付着生物であるイガイの接着タンパク質を参考に設計。
●海中作業における接着剤やシーリング材,また海中でのコンクリート硬化剤として期待。

概要

北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)・同大学院先端生命科学研究院のFan Hailong(フアン ハイロン)研究員,同研究拠点・同研究院・同大学国際連携研究教育局の龔 剣萍(グン チェンピン)教授らの研究グループは,海水中で素早く強力に接着し,繰り返し使用可能な新規接着剤を開発しました。

イガイやフジツボなどの海洋付着生物は,「接着タンパク質」と呼ばれる接着剤を分泌することによって,海水中で岩に強固に接着することが出来ます。一方,ほとんどの人工的な接着剤は空気中では材料に強く接着するものの,水中や海中では使用出来ません。

研究グループは,イガイの接着タンパク質中では+に帯電したカチオン性部位と芳香環と呼ばれる部位が隣り合って並んでいることに着目し,カチオン性部位と芳香環部位が隣同士に配置された高分子化合物を合成しました。得られた高分子化合物は海水中で接着剤として働き,石,ガラス,プラスチックなどの様々な固体を強く,素早く接着させることが出来ました。その接着強度は最大で約60kPa(接着面1m2あたり6tもの重さに耐える)と非常に丈夫であり,また剥離と再接着を何度も繰り返すことも出来ます。一方で,カチオン性部位と芳香環がランダムに配列した高分子化合物では,上記のような強い接着は見られませんでした。すなわち本化合物による海水中での強い接着は,カチオン性部位と芳香環が隣同士に配列した構造に由来することがわかりました。

本研究は,海水中において繰り返し使用可能な接着剤の開発を報告する世界初の例になります。本材料は,海水中において仮止め剤や破損の修復剤として使用可能であるほか,本技術を活かした海水中でのコンクリート製造なども可能になると期待されます。

なお,本研究成果は,2019年11月12日(火)公開のNature Communications誌に掲載されました。

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(左)カチオン性部位(+)と芳香環との隣位共重合で作られた接着剤の化学構造模式図。
(右)今回開発した新規接着剤。