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パインアイランド,スウェイツ棚氷への高温水塊の流入経路の解明~南極最大の氷損失域における棚氷海洋相互作用の理解~(低温科学研究所 助教 中山佳洋)

2019年11月25日

ポイント

●南極で最も海面上昇に寄与しているアムンゼン海東部について超高解像度の海洋モデルを開発。
●パインアイランド,スウェイツ棚氷への高温の水塊の流入経路の解明。
●海洋モデルでパインアイランド棚氷の融解量を再現。棚氷下部の海洋循環の重要性を示唆。

概要

北海道大学低温科学研究所の中山佳洋助教らの研究グループは,南極沿岸域で最も海面上昇に寄与している二つの棚氷(パインアイランド棚氷とスウェイツ棚氷)に着目して,東アムンゼン海の超高解像度海洋モデルを開発しました。

南極大陸には,地球上の氷の約90%が存在し,南極の氷が全て融解すると海水準は約60m上がるとされています。南極の氷は,その上に雪が降り積もることで形成され,徐々に大陸沿岸部へと流れ,一部の地域では海へと流れ込みます。その中でもアムンゼン海東部では,多量の氷が南極大陸上から海へと流出し,南極氷床による海面上昇の寄与の約70%に相当します。南極氷床から海への氷の流出は,温かい海水が棚氷下部へ流入することによって引き起こされます。そのため,どのように南極沿岸域の海が棚氷融解を引き起こしているかを理解することが,南極氷床による海面上昇を予測するために必要な課題となっています。

研究グループが開発した超高解像度海洋モデルは,南極沿岸/棚氷域に着目した既存の海洋モデルと比較しても3-4倍以上細かい世界最高の空間解像度を実現し,モデル結果から(1)パインアイランド,スウェイツ棚氷への高温の水塊の流入経路(2)融解量を決める上での棚氷下部の海洋循環の重要性などが明らかになりました。さらに,棚氷の融解量をモニタリングするために必要な海洋観測も示唆されました。観測データの限られる南極沿岸域において,観測データの再現性の高い海洋モデルを開発し,その結果をもとに,現実の海洋で起きていることを理解するという研究は,棚氷融解量,将来的な南極による海面上昇の見積もりを精緻化する上で必要不可欠です。

本研究成果は,2019年11月22日(金)公開の英国の科学誌であるScientific Reports電子版に掲載されました。なお, 本研究は,NASAジェット推進研究所との共同研究として実施されました。

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