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胎盤を作る細胞を破壊した受精卵からウシ誕生~新しいウシ改良増殖技術への貢献に期待~(農学研究院 准教授 川原 学)

2019年11月21日

ポイント

●哺乳類特異的臓器・胎盤の基となる細胞を破壊しても,再生され,正常に個体が発生することを確認。
●哺乳類受精卵に潜在している分化能力の一端を解明。
●栄養外胚葉の細胞を遺伝子検査に使って個体を生産できる,新しいウシ改良増殖技術の開発に期待。

概要

北海道大学大学院農学研究院の川原 学准教授らの研究グループは,同大学院獣医学研究院の永野昌志准教授(現・北里大学獣医学部教授)及び北方生物圏フィールド科学センターの河合正人准教授らと共同で,哺乳類特異的臓器である胎盤の基となる栄養外胚葉を破壊したウシ受精卵で,残りの細胞塊から栄養外胚葉が再生され正常に個体が発生することを哺乳類において初めて証明しました。

本研究では,内部細胞塊と栄養外胚葉という二種類の細胞運命が決定済みである胚盤胞期の受精卵をマウスとウシで用意し,外側に位置する栄養外胚葉を人為的に取り除いた単離内部細胞塊の発生能力について調べました。両種とも,単離内部細胞塊を体外培養することで栄養外胚葉「様」の細胞が再生されることがわかりました。この栄養外胚葉「様」の細胞群が実際に胎盤を作る能力を獲得し個体発生をサポートできるのかを検証するために,仮親の子宮に移植して妊娠満期までの発生能力について調べました。マウスでは個体発生を完遂できたものは観察されませんでしたが,ウシでは妊娠満期まで発生することが明らかになりました。産まれてきた子ウシと共に排出される胎盤を調べたところ,通常の受精卵に由来する胎盤と同等の形態を保持していることがわかりました。

以上より,ウシの胚盤胞期の受精卵における内部細胞塊では,完全な胎盤を形成する能力を保持した栄養外胚葉を再生し個体発生できることが示され,哺乳類受精卵がもつ細胞分化の潜在能力の一端が明らかになるとともに,受精卵の分化能維持における種多様性が示されました。本研究結果から,ウシ受精卵の栄養外胚葉を遺伝子検査によって能力判定したうえで個体生産できる可能性が示され,新しいウシ改良増殖技術の開発に寄与するものと期待されます。

なお,本研究成果は,2019年11月8日(金)公開のJournal of Biological Chemistry誌のオンライン版に先行公開されました。

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