2019年11月25日
北海道大学
札幌国際大学
ポイント
●食後の血糖値調節に対する咀嚼の効果は朝と夜で異なることを発見。
●朝食時の咀嚼運動の強化は血糖調節ホルモンであるインスリンの初期分泌を促進することを発見。
●肥満や2型糖尿病といった食習慣を原因とする疾患の予防を目的とした栄養食事指導への応用に期待。
概要
北海道大学大学院教育学研究院の山仲勇二郎准教授と札幌国際大学スポーツ指導学科の大塚吉則教授らの研究グループは,健常成人男性を対象に,異なる咀嚼回数(1口あたり10回あるいは40回)で食事をした際に食後の血糖値及び血糖値の調節を担う膵ホルモン・インスリンの分泌が朝と夜で異なるかを比較しました。その結果,食後の血糖値は,朝に40回咀嚼を行った条件で最も低くなり,食後30分のインスリン分泌量の上昇に関与することを発見しました。現在までに,よく噛むことが, 満腹感が早期に得られ食事量が抑えられること,食欲に関わるホルモン分泌に影響すること,食後のエネルギー消費量を増加させることで肥満の予防につながることが科学的に実証されてきました。今回の研究では咀嚼運動の強化(よく噛むこと)による血糖値の調節作用が1日の中で異なることを初めて明らかにしました。従来の肥満や糖尿病を予防・改善するための栄養食事指導は,特定の栄養素を1日の中で栄養を摂取する量を調節することに重点が置かれていますが,本研究では1日の中で「よく噛んで食事をする」時間帯を変えることによる栄養食事指導法を提言する際の科学的根拠を提供するものです。
本研究の結果は,「よく噛んで食事をする」という日本の一般家庭でも古くから実践されてきた食習慣に新たな科学的知見を提供するものであり,肥満や2型糖尿病といった疾患の予防・改善を目的とした栄養食事指導への応用が期待されます。
なお,本研究成果は,2019年11月23日(土)公開のThe Tohoku Journal of Experimental Medicine誌に掲載されました。
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