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海洋生物群集構造が海洋の温暖化から受ける影響を解明~今後の漁業管理や生態系管理の発展に期待~(北極域研究センター 特任准教授 平田貴文)

2019年12月3日

ポイント

●プランクトンや魚類が海洋の温暖化に対してどのように対応しているかを解明。
●寒冷指向種の種数と現存量が減少する一方,温暖指向種では種数と現存量が増加する可能性を示唆。
●漁業管理や生態系管理の発展に期待。

概要

北海道大学北極域研究センターのガルシア・モリノス助教らの研究グループは,プランクトンや魚類がより深い水深や,より高い緯度へ移動することで気候変動に対応していることを解明しました。

地球温暖化に対する海洋生物群集の応答は,種ごとに異なり,また種間の相互作用も変化するため把握が容易ではありません。研究グループは,1985年まで遡って得られた国際調査資料約300万点から,海洋の温暖化が北半球に生息する魚類やプランクトンの生物群集構造にどのような影響を及ぼしているかを,各生物の温度耐性を考慮して解析しました。

その結果,北大西洋のような急速に温暖化している海域では,寒冷指向種に取って代わり温暖指向種が優占するような強い変化があることを解明しました。この変化は,北太平洋やメキシコ湾のような水温が比較的安定した水域ではあまりみられませんでした。温暖化に敏感な海洋生物群集の特徴としては,群集を構成する各種の適温帯は狭い一方で,それぞれ異なる適温帯を持つことが挙げられます。今回解明した急速に温暖化している海域で影響を受けている生物群種はまさにこのような特徴を持ちます。しかし,ラブラドール海のような急速に海面表層が温暖化している海域では,深度方向へ強い水温勾配があるため(100mあたり5℃ずつ変化),予想されるよりも海洋生物群集の水平移動が小さい代わりに,寒冷指向種はより深い水深へ移動することによって温暖化へ対処していることがわかりました。

本研究成果は,海洋の温暖化によって寒冷指向種の種数と現存量が減少する一方で,温暖指向種の種数と現存量が増加する可能性があることを示唆しています。また,気候変動による海洋生物群集構造への影響が3次元的に起こることについても示唆するものであり,2次元に簡素化して表現しようとすると誤った結論を導く恐れがあることを示しています。現時点で観測可能かつ予測可能な生物群集変化を把握することは重要で,本研究成果を踏まえた漁業管理や生態系管理の発展が期待されます。

なお,本研究成果は,2019年11月25日(月)公開のNature Climate Change誌に掲載されました。

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