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アルツハイマー病発症予防に植物(こんにゃく)セラミドが有効~認知症予防目的の機能性食品素材・新薬開発に期待~(先端生命科学研究院 特任准教授 湯山耕平,招聘客員教授 五十嵐靖之)

2019年12月10日

ポイント

●植物(こんにゃく)セラミド摂取により脳内のアルツハイマー病原因物質が減少し認知機能が改善。
●植物セラミドは同病の発症原因物質を除去する神経細胞由来エクソソームの産生を促進。
●認知症予防目的の機能性食品素材や新薬開発への貢献に期待。

概要

北海道大学大学院先端生命科学研究院産業創出部門の五十嵐靖之招聘客員教授,湯山耕平特任准教授らの研究グループは,植物由来のセラミドがアミロイドßペプチド(Aß)蓄積を軽減させることを疾患モデルマウスを用いた実験で発見しました。

アルツハイマー病(AD)の発症原因の一つは,Aßが脳内に過剰に蓄積することであるとされています。また,最近の研究によってAß蓄積はAD発症の15年以上前から始まることが明らかになり,Aß蓄積を抑制することはAD予防を目的とした薬剤や機能性食品の開発戦略の一つとなっています。

研究チームはこれまでに,Aßがエクソソームと呼ばれる細胞外小胞と結合することによって分解除去されることを明らかにしてきました。本研究では,エクソソーム分泌を促進させる分子の探索を行い,その結果,植物(こんにゃく)に含まれる脂質成分のセラミドがエクソソーム産生を促進する作用をもつことを発見しました。植物性セラミドは,皮膚バリアの改善作用をもつことが知られている機能性食品素材で,美肌目的のサプリメントや飲料によく利用されています。

研究チームは今回,脳内でAßを過剰発現するADモデルマウスへ植物性セラミドを継続的に2週間経口投与する試験を実施しました。その結果,こんにゃく芋から精製したセラミド(グルコシルセラミド)投与によって,大脳皮質や海馬領域でAß濃度の低下やアミロイド蓄積が減少することがわかりました。また,セラミド投与マウスでは炎症やシナプス障害の軽減も観察され,短期記憶を評価する認知行動試験では指標の回復が認められました。

本研究で明らかになった植物性セラミドのAß関連病理軽減作用は,アルツハイマー病予防目的の機能性食品素材開発や創薬に繋がる可能性が期待されます。

なお,本研究成果は2019年11月14日(木)公開のScientific Reports誌に掲載されました。

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