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世界で初めて!軟骨細胞が関節の炎症を誘導することを発見(遺伝子病制御研究所  教授 村上正晃)

2020年1月15日

ポイント

●関節リウマチ,変形性関節症の病態発症には,軟骨細胞に存在する炎症アンプが重要。
●軟骨細胞の炎症アンプのうち,TMEM147がNF-κB経路を正に制御していることを初めて発見。
●抗TMEM147抗体が,関節リウマチに対する治療効果を持つ可能性を示唆。

概要

自己免疫疾患である関節リウマチ(RA)や炎症性疾患である変形性関節症(OA)病態に大きく関わる関節組織の細胞は滑膜細胞であるとこれまで考えられ,広く研究されてきました。その結果,治療法も進歩してきましたが難治例は未だに存在し,完治が困難な疾患です。

そこで北海道大学遺伝子病制御研究所の村上正晃教授らの研究グループは,これまであまり着目されてこなかった軟骨細胞に注目し,軟骨細胞がRA,OAの病態に炎症アンプを介して関与するという仮説を立て,研究を行いました。炎症アンプとは非免疫細胞において種々の炎症性サイトカインやケモカイン,増殖因子などが大量に産生される分子機構のことで,これによって免疫細胞の浸潤が局所的に誘導され,組織恒常性の破綻から慢性炎症が引き起こされます。村上教授らの研究グループによって,すでに炎症アンプの関連遺伝子は同定されており,自己免疫疾患をはじめとした多くの慢性炎症性疾患に関連することが明らかとなっていて,新たな治療標的となりうることを多くの論文にて報告しています。

本研究では,RA,OAの軟骨細胞において炎症アンプが活性化していることを見出し,さらに炎症アンプ関連遺伝子の一つとして同定されたTMEM147(Transmembrane protein147)が軟骨細胞に発現して,炎症アンプの主要な経路の一つであるNF-κB経路を正に制御していることを初めて明らかにしました。加えて抗TMEM147抗体が,関節炎モデルに対して治療効果を持つ可能性を示すことに成功しました。

このことは,RA,OA治療に対して新たな方向性を示すものであり,治療に難渋するRA,OAの突破口となる可能性があります。

なお,本研究成果は,2019年11月29日(金)オンライン公開のArthritis & Rheumatology誌に掲載されました。

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