2020年1月24日
北海道大学
日本医療研究開発機構
ポイント
●ウエストナイルウイルスのウイルスタンパク質が,細胞内のタンパク質の凝集体の形成を誘導。
●ウイルスタンパク質は,オートファジーに関連する宿主のタンパク質の分解を促すことが判明。
●オートファジーの抑制に注目することで,ウイルス性脳炎の新たな治療法の開発の進展が期待。
概要
北海道大学大学院獣医学研究院の小林進太郎助教,好井健太朗准教授(当時)らの研究グループは,世界中で流行し,重篤なウイルス性脳炎を引き起こすウエストナイルウイルスが,感染した神経細胞を傷害するメカニズムを明らかにしました。
多くのウイルスは,細胞内のタンパク質などを分解・除去するオートファジーにより,増殖が抑制されることが知られています。本研究によりウエストナイルウイルスはオートファジーを抑制し,その結果,ウイルスに感染した細胞にタンパク質の凝集体の形成を誘導して,細胞死及び脳炎形成を引き起こすことが明らかになりました。更にウイルスが感染した細胞にオートファジーを誘導することでタンパク質の凝集体が除去され,細胞死が抑えられることも明らかになりました。多くのウイルス性脳炎は病気の発生メカニズムがわかっておらず,特異的な治療法もありません。本研究結果は特異的な治療法が存在しない多くのウイルス性脳炎に対し,病気の発生メカニズムや治療法の開発につながる成果であると考えられます。
本研究成果は,2020年1月24日(金)公開のPLOS Pathogens誌にオンライン公開されました。
なお本研究は,科学研究費補助金,国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業,武田科学振興財団,独立行政法人日本学術振興会とチェコ科学アカデミーとの二国間交流事業(共同研究)により行われました。
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