2020年2月26日
ポイント
●加熱/冷却により分子構造の変化を実現し,酸化特性の制御に成功。
●酸化特性が増強する高温ではラジカル種の比率が増加していることを解明。
●有機ラジカル種は磁性を示す可能性があることから,新規磁性応答材料の開発にも期待。
概要
北海道大学大学院理学研究院の石垣侑祐助教,鈴木孝紀教授及び橋本拓実氏らの研究グループは,加熱/冷却により分子の構造(存在比)を変化させることで,酸化特性の制御に成功しました。
研究グループは,炭素=炭素二重結合の周囲に適度な大きさの置換基を複数連結することで,折れ曲がり構造とねじれ構造の両方をとり得る分子を新たに設計しました。これは,基本的には折れ曲がり構造のみをとる一方,ある条件下ではねじれ構造の存在比が増すことを狙ったものです。実際に,X線結晶構造解析では折れ曲がり構造のみ観測されましたが,溶液中では折れ曲がり構造とねじれ構造間の速い構造変化が示唆されました。
また,温度可変スペクトルから,低温溶液中では折れ曲がり構造のみが存在しているのに対し,室温より高温ではねじれ構造が一部生じていることを明らかにしました。さらに,このねじれ構造は折れ曲がり構造よりもはるかに酸化されやすいことも見出しました。これにより,温度変化による分子構造変化を実現し酸化特性の制御に成功しただけでなく,ねじれ構造は開殻のラジカル種であることも明らかにし,温度が上がるにつれてその比率が増大することも示しました。このような有機ラジカル種は,磁性材料といった応用面でも注目されており新規材料の開発が期待されます。
なお,本研究は大阪大学大学院基礎工学研究科の鈴木修一准教授との共同研究による成果であり,2020年2月20日(木)公開のAngewandte Chemie (Angewandte Chemie International Edition)誌に掲載されました。
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