2020年4月21日
北海道大学
神戸大学
ポイント
●ラン科以外の被子植物から初となる,イチヤクソウのアルビノを北海道札幌市内で発見。
●アルビノ(白化個体)は,菌従属栄養植物の進化過程を研究する上で有用な研究材料。
●アルビノ個体を利用した菌従属栄養植物の進化の研究進展に期待。
概要
北海道大学総合博物館の首藤光太郎助教,神戸大学大学院理学研究科の末次健司准教授,北海道札幌市在住の田島裕子氏らによる研究グループは,北海道札幌市内に生育するツツジ科イチヤクソウのアルビノ(白化個体)を報告しました。本研究は第一発見者である田島氏がTwitterに写真を投稿し,首藤助教が投稿を発見したことから始まり,形態調査と葉緑体DNAの塩基配列によって,発見した個体がイチヤクソウであること,葉緑素量とクロロフィル蛍光の測定によってアルビノであることを確認し,安定同位体比(δ13Cとδ15N)から発見した個体の栄養状態が評価されました。
光合成を行わず地中の菌根菌から有機物を得て生活する菌従属栄養植物は,その進化過程に謎が多い植物として知られています。光合成と菌への寄生の両方を行う種(部分的菌従属栄養植物)に稀に見られるアルビノは,被子植物ではラン科のみに知られ,菌従属栄養植物の進化過程を研究するために有用な研究材料として様々な研究で用いられています。今回の発見により,部分的菌従属栄養植物のアルビノが,ラン科以外の被子植物からは初めて報告されました。これまでラン科のアルビノを用いて進められてきた研究が,系統的に離れたツツジ科でも進展することが期待されます。
本研究成果は,2020年4月18日(土)公開のAmerican Journal of Botany誌に掲載されました。
また,本研究で引用した証拠標本が,2020年3月6日に発売された書籍『北大総合博物館のすごい標本(北海道新聞社刊)』に掲載されています。
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左:通常のイチヤクソウ(2017年6月30日新潟県佐渡市で撮影)
右:アルビノのイチヤクソウ(2018年7月18日札幌市内で撮影)