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非リボソームペプチドの環化機構を解明~ペプチド環化生体触媒の開発に期待~(薬学研究院 教授 脇本敏幸)

2020年5月7日
北海道大学
東京大学

ポイント

●X線結晶構造解析によって新規ペプチド環化酵素SurEの構造を解明。
●SurEの基質選択性と一般的な非リボソームペプチド環化機構を解明。
●多様な環状ペプチドを効率的に合成する生体触媒の開発に期待。

概要

北海道大学大学院薬学研究院の松田研一助教,脇本敏幸教授及び東京大学大学院薬学系研究科の森 貴裕助教,阿部郁朗教授らの研究グループは,放線菌から発見した新規ペプチド環化酵素SurEの触媒機構の解明に成功しました。ペニシリン結合タンパク質(PBP-type TE)に分類されるSurEは,直鎖状のペプチド鎖の両端を認識し,N末端とC末端のアミノ酸残基間でアミド結合を形成して環状ペプチドを効率的に合成することがわかりました。

SurEは,C末端残基にD-アミノ酸,N末端残基にL-アミノ酸を有する基質を選択的に受け入れ,中央部のアミノ酸残基に対しては寛容な選択性を示します。この知見はX線結晶構造解析によって得られたSurEの構造情報からも支持されました。さらにD-アミノ酸とL-アミノ酸との間のヘテロキラルな環化反応は,自然界のほぼ全ての環状非リボソームペプチドにおいても共通の機構であることがわかりました。さらに,本研究ではSurEの寛容な基質特異性と放線菌細胞内で改変した非リボソームペプチド合成酵素を組み合わせることで,非天然型環状ペプチドの合成にも成功しました。PBP-type TEファミリー酵素の機能をさらに開拓し,生体触媒や合成生物学的手法へ展開することによって,環状ペプチドの新しい供給法の確立につながることが期待されます。

本研究成果は,2020年5月5日(火)公開のNature Catalysis誌にオンライン掲載されました。

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本研究成果の概要