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北極圏の植物食性恐竜・エドモントサウルスの全貌が明らかに~日本に恐竜が渡るまで~(総合博物館 教授 小林快次)

2020年5月7日
北海道大学
岡山理科大学

ポイント

●アラスカのハドロサウルス科ウグルナールク属が同科のエドモントサウルス属であることを解明。
●エドモントサウルス属が広範囲の緯度に生息し,環境変化への適応能力を持っていたことを示唆。
●エドモントサウルス族が北環太平洋沿岸に広く生息しアジアと北米間を移動できた可能性を示唆。

概要

米国ペロー自然科学博物館の北極圏恐竜研究プロジェクトに参画している北海道大学総合博物館小林快次教授と日本学術振興会特別研究員で岡山理科大学の高崎竜司研究員物館は,米国ペロー自然科学博物館との共同研究として,米国アラスカ州北部の白亜紀末(約6,900万年前)の植物食性恐竜,ハドロサウルス科ウグルナールク属の再研究を行いました。

比較・系統分類の結果,ウグルナールク属がエドモントサウルス属(属:Genus)であることを解明しました。これまでエドモントサウルス属の分布域は,米国コロラド州北部を南限(北緯40度程度),カナダアルバータ州南部を北限(北緯53度程度)とすると考えられていましたが,今回の研究によって北緯70度程度まで生活圏を広げていたことが明らかになりました。これだけ広い生息域を持っていたにも関わらず,形の違いが小さいことがわかりました。これらの結果は,この恐竜が北極圏への高い適応能力を持っていたことと,体の形を変えずに緯度の違いによる環境の変化に適応して生活していたということを示します。

また,エドモントサウルス属は,近年北海道で発見され命名されたカムイサウルス属(通称:むかわ竜)と同じエドモントサウルス族(族:Tribe)の一員であることから,エドモントサウルス族が北環太平洋沿岸に広く分布していたことになります。白亜紀末当時,アジア大陸と北米大陸は現在のアラスカ州を介して繋がっていましたが,恐竜類の種類によって,両大陸を自由に行き来することができたものとできないものがいたと考えられています。エドモントサウルス族は,北極圏の環境に適応できたことから,厳しい環境が大陸間の移動の障壁にならなかったと推測され,北米からアジアに渡り,最終的にカムイサウルス属といったアジアの恐竜に進化したと考えられます。

なお,本研究成果は,202057日(木)公開の国際科学誌PLoS ONEに掲載されました。

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アラスカ州のハドロサウルス科の復元画(©服部雅人)