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心不全における新たな非侵襲的右心房圧推定法の開発~心臓カテーテルを用いない新たな右心房圧推定法に期待~(医学研究院 永井利幸准教授)

2020年6月23日

ポイント

●磁気共鳴肝臓エラストグラフィーにより,右心房圧の上昇を非侵襲的に評価できることを証明。
●カテーテルを使用せず心不全診療に有益な多くの情報を一度の非侵襲的検査で得ることが可能。
●心不全患者の治療薬用量適正化や予後推定指標としても期待。

概要

北海道大学大学院医学研究院循環病態内科学教室の加藤喜哉客員研究員,永井利幸准教授,安斉俊久教授らの研究グループは,心不全の病態の一つである"うっ血"(右心房圧の上昇)を,肝硬変の評価などに用いられている磁気共鳴肝臓エラストグラフィーにより,非侵襲的かつ高い精度で評価しうることを世界で初めて証明しました。

正確な右心房圧上昇の評価は,心不全診療(薬剤量の適正化や予後予測)において重要な役割を担っています。右心房圧を正確に評価するにはカテーテル検査が必要ですが,侵襲性が高く,出血や感染症など合併症が懸念されます。過去に,超音波肝臓エラストグラフィーで測定した肝硬度は右房圧上昇によって生じたうっ血肝の評価法として有用であると報告されていますが,その測定精度は決して高くないことが問題点とされてきました。

今回の研究では,心不全患者においてカテーテルを用いない,新たな非侵襲的右心房圧推定法として,磁気共鳴肝臓エラストグラフィーで測定した肝硬度の有用性を検討しました。108名の患者さんにご協力いただき,右心カテーテル検査,磁気共鳴肝臓エラストグラフィー,超音波肝臓エラストグラフィー,心エコー検査を実施しました。右心カテーテル検査で測定された正確な右心房圧と,磁気共鳴エラストグラフィーで測定された肝硬度の相関関係を調べたところ,両者は強くかつ有意に相関することがわかりました。また,磁気共鳴エラストグラフィーで測定した肝硬度,超音波エラストグラフィーで測定された肝硬度,心エコー検査で測定された下大静脈径の比較では,磁気共鳴エラストグラフィーで測定された肝硬度は最も高い精度で右心房圧高値を予測できることがわかりました。

これらの結果から,磁気共鳴肝臓エラストグラフィーは,カテーテルを用いた侵襲的な検査を行わずとも安全かつ正確に心不全患者さんのうっ血評価を行うことができると示唆された点で,心不全診療において極めて有用性の高い検査となる可能性があるものと考えられます。

なお,本研究成果は2020617日(水)公開の米国心臓病学会誌JACC: Cardiovascular Imaging誌にオンライン掲載されました。

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磁気共鳴エラストグラフィーの概要