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海洋深層の生物多様性で想像に反する気候変動の影響を予測~気候変動適応策への貢献に期待~(北極域研究センター 特任准教授 平田貴文)

2020年6月30日

ポイント

●これまで難しかった深海生物多様性の気候変動影響評価に成功。
●気候変動による深海生物多様性への知られざる影響を地球規模で予測。
●効果的な気候変動適応策の貢献に期待。

概要

北海道大学北極域研究センターのGarcia Molínos 助教らの研究グループは,海洋の生物多様性における将来の気候変動の影響が海洋表層と比べ深層で小さくなるという,これまでの見解を打ち破る可能性がある新たな解析結果を打ち出しました。研究グループは,気候速度という指標を用いて,海洋生物への気候変動の影響を評価しました。その結果,将来における気候速度は一部を除いたほぼ全ての水深で,現在より早くなることを見出しました。また,気候変動緩和策は海洋表層(0-200m)の生物多様性への脅威を減らすことができる一方で,水温の水平的な変化速度はむしろ深層(特に,200-1,000m)のほうが大きい場合が多く,深層の気候速度へ悪影響を及ぼすことがわかりました。結果として,気候変動によって水温自体の上昇は海洋表層のほうが深層より大きくなるものの,比較的水温が安定的な深層の環境においてすでに環境適応していると考えられる深層生物にとって,相対的に「早い」水温変化へ対応しづらい可能性が示唆されました。

なお,本研究成果は,2020525日(月)公開のNature Climate Change誌に掲載されました。

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気候速度と海洋生物多様性との関係。a)海洋中の3つの水深帯(上段:表層0-200m,中段:中深海層200-1,000m,下段:漸深層1,000-4,000m)における,気候変動速度の大きさと生物種数の関係の分類を地図化したもの。色とその意味は図中の右部を参照。b)3つの水深帯における分類の頻度。