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生体に近い室温条件でのタンパク質構造の測定法を開発~創薬候補化合物探索のスピードアップに期待~(工学研究院 助教 真栄城正寿)

2020年8月26日
北海道大学
理化学研究所
株式会社リガク
日本医療研究開発機構

ポイント

●わずかな試料から生理条件に近いタンパク質の立体構造を測定できる構造解析法を開発。
●タンパク質リガンド複合体構造を簡単なピペット操作のみで半自動的に測定可能。
●製薬企業などでの創薬候補化合物探索のスピードアップに期待。

概要

北海道大学大学院工学研究院の真栄城正寿助教,渡慶次学教授,同総合化学院修士課程の竹田怜央氏,理化学研究所放射光科学研究センターの上野 剛専任技師,山本雅貴グループディレクター,株式会社リガクらの研究グループは,タンパク質と創薬候補化合物(リガンド)の複合体の3次元立体構造を生体に近い室温条件で測定できる方法を開発しました。

標的となるタンパク質の立体構造情報に基づいた薬剤設計方法であるStructure-based Drug DesignSBDD)やFragment-based Drug DesignFBDD)は,製薬企業をはじめとした創薬研究において広く利用されています。一般的にタンパク質の立体構造は,タンパク質の単結晶を用いたX線結晶構造解析によって決定されています。しかし,従来の測定法では,X線による結晶の損傷を防ぐために約−170℃に凍結した結晶試料を用いて測定されており,生体内での立体構造との違いが指摘されていました。また,タンパク質とリガンド複合体の構造決定では,①結晶作製,②複合体調製,③測定,④解析・構造決定と煩雑で時間がかかる操作や多量の結晶試料が必要でした。

研究グループは,マイクロ流体デバイスと大型放射光施設「SPring-8」のビームライン(BL26B2),自動データ処理システム(KAMO)を組み合わせることで,数µLの試料から室温条件においてタンパク質の立体構造を簡便に決定できる測定法の開発に成功しました。また,タンパク質とリガンド複合体の調製から構造決定までのプロセスを半自動的に行い,6種類の新規複合体の構造決定に成功しました。今後,デバイスの大規模化を進めることで創薬開発など産業利用への応用が期待されます。

なお,本研究成果は,2020825日(火)公開のChemical Science誌に掲載されました。

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今回開発した測定法のイメージ(左)と決定したタンパク質−リガンド複合体の立体構造(右)