2020年9月16日
ポイント
●発がんに強く関与するWntシグナルを制御しているリン酸化スイッチを新たに発見。
●リン酸化スイッチが壊れると,通常より少ない遺伝子変異で大腸がんを発症することを確認。
●リン酸化スイッチを強制的にオンにすると発がんを抑制できることから,がん治療への応用に期待。
概要
北海道大学大学院医学研究院の築山忠維助教らの国際共同研究グループは,大腸がんの発症メカニズムを解明し,その新たな治療法を提示しました。
これまでに築山助教らの研究グループは,大腸がんで比較的多く見られる遺伝子変異に着目した研究を行ってきました。そして主に腸管の幹細胞で働くRNF43という遺伝子が,がん細胞の増殖と異常細胞の排除の両方を抑制していることを報告してきました。
今回の研究では,がん細胞の増殖を抑制するためにはRNF43タンパク質がリン酸化を受けて機能的なスイッチがオンになる必要があることを発見しました。一方でRNF43は,がん細胞が細胞死によって排除される過程を,このリン酸化スイッチとは関係ない別のメカニズムで抑制していることも同時に発見しました。また大腸がんの患者さんではRNF43遺伝子の変異によってリン酸化スイッチが壊れているため,がん細胞の増殖を抑制することも増殖したがん細胞を排除することも出来なくなっていることを発見しました。一般的に発がんには最低でも3段階の遺伝子変異が必要と考えられていますが,RNF43に変異を持つ場合はたった2つの遺伝子変異だけで大腸がんが発症することをマウスのモデル実験によって確認しました。
さらにマウスに移植したがんの中でRNF43のリン酸化スイッチを人工的にオンにすると,遺伝子変異によって失われたRNF43の機能が回復し,発がんも大きく抑制されました。これはRNF43の遺伝子変異により大腸がんを発症した患者さんにおいてRNF43のスイッチを外部から強制的に入れることが可能となれば,大腸がんの有効な治療法になり得ることを示しています。
本研究成果は,2020年9月15日(火)公開のNature Communications誌にオンライン掲載されました。
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