2020年10月1日
ポイント
●圧力急冷プロセスで合成したシリカガラスの構造を解明。
●光の伝送損失が常圧の50%以下という究極の透明度をもつガラスを合成できることを予測。
●光ファイバーの光伝送距離が飛躍的に伸び量子通信の実用化の加速に期待。
概要
北海道大学電子科学研究所の小野円佳准教授らの研究グループは,ペンシルベニア州立大学(アメリカ)のYongjian Yang博士,John C. Mauro教授及びAGC株式会社の本間 脩氏,浦田新吾博士らと共同で,理想的な究極透明ガラスの構造を解明しました。
本研究は,計算機科学を用いて,圧力急冷プロセスで合成したシリカガラスの構造を求めたものです。その結果,高温高圧下ではガラスの構造がより理想的になって透明度が極めて高くなり,光損失が常圧ガラスの50%以下になることを見出しました。シリカガラスは光ファイバーの母材として広く利用されているガラスで,今回明らかにした構造を持つシリカガラスを光ファイバーに応用できれば,光信号増幅器による増幅なしにデータを伝送できる距離を飛躍的に伸ばすことができます。その他にも,究極の安全性をもつと言われる量子通信の実用化へはずみがつくことが期待されます。
なお,本研究成果は,2020年9月17日(木)公開のnpj Computational Materials誌に掲載されました。
詳細はこちら
ガラスのネットワーク構造がトポロジーの剪定により理想構造になっていく様子(マクロな変化)。常圧下(0 GPa)ではガラスに空隙(黄色)と不安定なネットワーク構造(赤丸:酸素,青丸:ケイ素)が数多く存在するが,4GPaの圧力がかかると,空隙も不安定なネットワーク構造もほとんどなくなり,理想的なネットワーク構造が形成される。