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ザンビア共和国カブウェ鉱床地域での住民の健康影響評価~鉱山由来の鉛・カドミウム・亜鉛による住民の造血・肝臓・腎臓機能への影響を評価~(獣医学研究院 博士研究員 中田北斗,助教 中山翔太,教授 石塚真由美)

2020年10月12日
北海道大学
国際協力機構

ポイント

●カブウェ鉱山跡地の近くに住む住民ほど,血中の鉛濃度・カドミウム濃度が高いことが判明。
●各金属の血中濃度と臨床的パラメーターの間には相関関係があることが判明。
●鉛暴露によるヘム合成阻害や,鉛中毒による腎臓の能力低下の可能性が示唆。

概要

北海道大学大学院獣医学研究院の中田北斗博士研究員,中山翔太助教,石塚真由美教授と,ザンビア大学獣医学部のジョン・ヤベ講師らの研究グループは,ザンビアのカブウェ鉛鉱床地域に暮らす人々(504名)の血液サンプルを採取し,それら血中に含まれる鉛・カドミウム・亜鉛の濃度を測定し,各金属による臨床機能への影響を明らかにしました。

調査対象者の血中鉛濃度は0.79154.75μg/dLで,鉱山跡地の付近に住む人ほど高い濃度を示しました。鉛濃度が最も高いカブウェ地域内の2地区では,血中カドミウム濃度も有意に増加していることが判明しました(0.37±0.26μg/L0.32±0.30μg/L)。

肝臓・腎臓機能指標のいくつかは,成人の20~50%において基準値から外れており,多くの成人が肝臓・腎臓疾患を有していることが示されました。また,血中鉛・カドミウム濃度の平均値が最も高い2地区では,デルタアミノレブリン酸脱水酵素活性が有意に低下していました。特に鉛濃度と酵素活性には有意な負の相関が見られたことから,鉛暴露によりヘム合成が阻害され,貧血症状を呈している可能性が示唆されました。

各金属の血中濃度と臨床的パラメーターの間には負の相関関係がみられました。一例として,全年齢層において,血中鉛濃度とデルタアミノレブリン酸脱水素酵素の間で負の相関関係が確認されました。また,0歳~4歳を除く全ての年齢層において,血中カドミウム濃度と推算糸球体濾過量(単位時間当たりの腎糸球体の濾過量)の間に負の相関関係がみられました。つまり,血中のカドミウムによって,腎臓における老廃物の尿中排出能力の低下が示唆されました。

カブウェ地域における鉛汚染対策や住民の鉛中毒治療が早急に行われるべきことが強く示され,実施にあたって本研究により得られた知見が役立つと期待されています。

本研究成果は,2020817日(月)公開のChemosphere誌にオンライン掲載されました。

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北海道大学とザンビア大学の合同調査チーム