2020年10月21日
北海道大学
青山学院大学
ポイント
●レアアース錯体―イオン液体複合発光体を用いたデバイスの開発に成功。
●酸化還元電位でレアアースの価数制御に伴う発光能を変調する仕組みを解明。
●省レアアース型発光性デバイスの進展に期待。
概要
北海道大学電子科学研究所のキムユナ准教授らの研究グループは,青山学院大学理工学部化学・生命科学科の長谷川美貴教授らの研究グループと共同で,光エネルギー変換特性を示すレアアース(RE)錯体ーイオン液体の複合化に成功し,これを用いた酸化還元発光応答を示すデバイスを世界に先駆け開発しました。
デバイスを作る時の素材は,電気を効率よく流すことが条件で,キム准教授らはこれまでもイオン液体を用いた分子性電子材料開発で実績を上げていました。一方,今回用いた発光性RE錯体は,螺旋型の有機分子がREイオンに巻き付くような分子構造を持っており,有機分子が紫外線を吸収するとともにそのエネルギーを赤色の発光として変換する光機能を持っています。また,長谷川教授らはこの錯体が一般的な有機溶媒だけでなく,特殊な有機溶媒であるイオン液体中でも分解しないことを証明しており,本共同研究により高流動性・高電気伝導性発光体として今回のデバイスに適用しました。REには,価数が3価の時に赤色の,2価の時に青色の発光を示すユウロピウムを用いています。従来は困難であったユウロピウムの酸化還元応答をデバイスにかける電位の変調で誘導し,1種の発光体が赤色と青色の発光を発現できる可能性を見出したことで,新たな応用展開が期待されます。
なお,本研究成果は,2020年9月15日(火)公開のACS Applied Materials & Interfaces(アメリカ化学会発行)に掲載されました。
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